セ・リーグの優勝争いは8月17日時点で阪神タイガースが抜け出しつつあるものの、いまだに混戦が続いている。最多勝争いも阪神の藤浪晋太郎が10勝を挙げてリードしているが、2桁勝利を挙げているセ・リーグの投手はこの藤浪のみ。各チームのエースが勝利数を思うように積み上げられていない。
「このまま行けば、今年のセの最多勝投手は、昨年同様に13勝程度かもしれない」(ベテラン記者)
昨年の最多勝は阪神のメッセンジャーと中日ドラゴンズの山井大介が挙げた13勝。この勝利数での最多勝は、2リーグ制になってから最も少ない数字だ。
「9勝を挙げている菅野智之は、2ケタ勝利一番乗りを掛けた13日の対DeNA戦で、9回に逆転アーチを許し、敗戦投手となりました。菅野と広島のジョンソンは1点台の防御率をキープしており、防御率3位の前田健太も2.31と好成績です」(同)
要するに、どのチームも打線が振るわず、エースが登板した試合で援護できない状況が続いているのだ。
そこで浮上してきた改善案が、予告先発制をやめるか、ということだという。
「予告先発制なら、その投手の名前でお客さんが呼べる試合ができてくる。営業的利点も大きいが、対戦投手の研究をする時間を十分に与えるのと同じなので…」(球界関係者)
先発投手を明かす不利益はどのチームも同じのはず。とはいえ、各球団のエースが勝ち星を上げられない状況は芳しくない。セ・リーグはパ・リーグにならって予告先発制を導入したが、その際にもファンに「先発投手を予想させる醍醐味がなくなる」という懸念が指摘されていた。予告制発制が廃止されるとなれば、「やっぱり」と思うファンも少なくないだろう。しかし、先発投手たちは「いまのままがいい」という心境だという。
予告先発制のパ・リーグ投手だったプロ野球解説者が予告先発について説明する。
「ハッキリ言って、プロ野球チームのスコアラーは例外なく優秀だから、先発投手を伏せていても、次の試合に誰が投げるかは見抜いています。外すとしても、1年に1回か2回。ローテーションもあるし、試合前の調整を見ていれば分かります」
スコアラーがお見通しなのであれば、予告先発制を止める理由はない。このままファンに情報を提供し、営業につながる予告先発は続けるべきなのではないか?
「相手チームに読まれていても、あえて隠すというポーズをしなければならないんです。投げ込み練習を故意にやらなかったりとか。その気苦労がなくなるだけでも、予告先発制には意義がある」(同)
セ・リーグも、予告先発制になって投手の気苦労がなくなった。しかし、予告先発がなければ、先発ローテーションを崩して、若手や中継ぎ投手を先発させる奇襲が可能だ。
奇襲が必要とされるチームは正攻法で勝てないチーム。それはすなわち弱いチームと言える。今年のセ・リーグは交流戦でもパ・リーグに大きく負け越した。セ・リーグが予告先発制を見直す動きが出てきたのは、6球団が揃って弱くなったということだろうか。