今季の横浜DeNAは、借金「8」となり、首位巨人とのゲーム差は7(5月20日現在)と、1カ月近く最下位に低迷している。10年前の5月18日、同じく借金生活を送っていた大矢明彦監督(当時)が途中休養を命じられたことから、スポーツメディアはラミレス監督の「休養説」を盛んに報じている。
「このまま低迷が続き、横浜スタジアムへの客足に影響すると判断すれば、監督の休養は避けられない。その場合、青山道雄ヘッドコーチか万永貴司二軍監督のどちらかが代行監督を務めるのだろうが、問題はその先の『次期監督』。メディアでは前監督の中畑清氏や“大魔神”佐々木主浩氏、ファンに人気の高い“番長”三浦大輔投手コーチの名が挙がっているが、南場智子オーナーが思い描いているのは全く別の人物。気鋭の経営者らしいスカウティングと言える」(地元財界幹部)
横浜DeNAの南場智子オーナーが後任監督に目をつけたことが図らずも露呈したのは、投資家が最も注目する決算発表でのことだった。
DeNA(ディー・エヌ・エー)は5月10日、2019年3月通期の連結決算を発表するとともに、証券アナリスト・機関投資家向けの説明会を開いた。そこで、営業利益は135億円で前年同期と比べ51%減少。しかし、スポーツ事業は、営業利益30億円(同39%増)と好調を維持していると明かした。
その中で注目を集めたのが、大規模な自社株買いの発表だった。発行済み株式数の26%(3800万株)を、500億円を上限に’20年4月30日まで市場で買い付けるという。
「DeNAは3月時点で現金などの残高が1014億円あり、資金力は十分。自社株買いをすれば1株当たりの価値が上がり、株価が上昇します。新たにポケモン社(任天堂関連会社)と協業し、ポケモンを活用したスマートフォンアプリゲームを今期中に配信することも発表されました。これらの情報から透けて見えるのが、『イチロー招請シフト』なのです」(証券アナリスト)
実は、DeNAにとって第2位の株主は、10%を保有し、ゲーム事業で提携する任天堂。そして、今年3月のメジャーリーグ開幕シリーズで引退したイチローは、米大リーグのマリナーズに入団した当時、契約金や年俸の一部を当時のマリナーズのオーナー会社だった米国任天堂から同社の株式でもらっていたと言われ、今でも相当数の株式を所有していると見られている。
「自社株買いでDeNAの株価が上がれば、任天堂の株価にも影響し、メリットは大きい。彼(イチロー)がこの情報に関心を持っているのは確かです」(イチローと親しい放送関係者)
また、DeNAは買い取った株式を消却せず金庫株とし、「ストックオプション(従業員などの自社株購入権)」として活用することも考えられる。これは、企業があらかじめ決めた価格で、その企業の役員や従業員などに自社株を買える権利を付与すること。権利行使期間であれば、好きな時にその時(値上がり前)の株価で購入することもできるのだ。
「仮にそのような権利を監督就任の条件として用意すれば、マネー管理に長けたイチロー夫妻が興味を抱く可能性はある。南場オーナーなら、そのくらいの芸当は出来る。買い付けを来年の開幕の時期に合わせて実施するのも、偶然ではないだろう」(前出・財界幹部)
ここに来て、DeNAの株価は上昇中だ。今年4月には1592円と3年ぶりの安値をつけていたが、5月17日には2103円に回復。2016年9月に付けた3955円へ向けて右肩上がりになっている。
もし仮に、いまストックオプションの契約を結んでおけば、利益は計り知れないものになる…。
実はこの決算発表の直前、南場オーナーが、ラミレス監督に見切りをつける出来事があった。借金が2ケタの「10」となった5月8日の故郷新潟で行われた巨人戦でのことだ。DeNAは4点リードしていた7回になると、突然、中継ぎ陣が炎上し、大量7点を奪われて大逆転負けを喫したのだ。
「南場オーナーにとって、今年は特別な年。DeNA設立から20年目の節目の年だからです。小さなオフィスで産声を上げたベンチャー企業が、ネットオークション事業を皮切りに事業領域を拡大し、ゲーム、ヘルスケア、スポーツ、自動運転など、様々な事業を展開して、今や東証一部の上場企業に成長した。そのシーズンを優勝で飾れないばかりか、故郷の巨人戦で赤っ恥をかかされたのです。その直後、フロント首脳に『適切な対応を』と求めたという情報も聞いています」(スポーツ紙デスク)
野球は“ボールゲーム”だが、球界初の女性オーナーとなった南場氏は球団経営に斬新な“マネーゲーム”の要素を取り入れる考えで、資産運用にも長けたMLB成功者以外の選択肢はない。
イチローが国民栄誉賞を辞退した理由もここにある。