分岐点となったのはおそらく、準レギュラー出演中の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)だろう。世界中のあらゆる場所で展開する人気企画の「パパラッチ出川」、「デヴィ探検隊」、「男の挑戦シリーズ」、「マジシャン出川」、「はじめてのおつかい」などは、出川の人となり、優しさと気配り、なにより番組愛に満ちあふれている。一生懸命だが、どこかずれている座標軸。量産する奇跡と笑い。出川が引きの強い芸人であることを、改めて知らしめた。
では、『イッテQ!』のようなふんだんな制作費、海外ロケとは真逆のチープな国内ロケでは、どんな化学反応が起きるか。そうして昨年スタートしたのが、自身初となるゴールデンタイムの冠番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京系)だ。ここには、ルールが多く存在する。
バイク乗車時は、スイカ柄のヘルメットを着用する。週替わりゲストと、そのゲストが「雑」と声をそろえる縫田ディレクター兼総合演出家の3台で走行する。乗車する電動バイクは、目的地までで見かけた店舗、民家、宿泊先などで充電する。電池が切れたライダーは、手押しで充電場所まで向かう。アポや交渉は基本、出川かゲストの役目。7月14日には、テレ東におよそ34年ぶりに明石家さんまが出演して、番組史上最高視聴率となる13・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を叩き出したが、充電や撮影、訪問といった交渉はすべて、さんまが行っている。
ほかのバラエティと一線を画すのは、テレビ画面に映っている人すべての発言を、テロップで追う点だ。稀にテロップ渋滞が起こるため、画面の半分が文字で埋まることもある。さながら、ニコニコ動画だ。しかし、細かい笑い、住民の声も逃さないことで、出川特有の言い間違いが浮かび上がる。番組制作スタッフにとっては骨の折れる作業だが、この重箱の隅をつつくようなことこそが、テレ東。さすが、池の水を全部抜いてみる局だ。
日テレで育まれ、テレ東でも大輪の花を咲かせている出川。このデガワムーブメントに終わりはなさそうだ。(伊藤雅奈子)