「少し前まで、あいりん地区は観光客の間で敬遠気味なところがあった。アジア系外国人が日本人労働者を食い物にする店も多く、安心して利用できる店が少なかったからです。それが今では、新今宮駅近くには地元ボランティアによる観光案内所が設置され、阿倍野から萩之茶屋周辺にかけ明るい雰囲気の飲食店も増えた。それがネット発信で広がり、一気に観光客が利用する街になり始めているのです」(地元飲食店店主)
そのため、あいりん地区の中心に位置する「三角公園」周辺にも外国人が増えた。地元労働者と会話を交わす光景もよく見られるようになり、「今年の冬は炊き出しや焚き火にも外国人が来よるで。彼らにとってもいい体験になるのと違うか」との声も聞こえてくる。
「地元商店街が、主な顧客だった労働者の減少や高齢化への対策を真剣に考えるようになったということ。新今宮駅からの人の流れを、何としてでも地域の活性化に繋げたい行政と地元の連携が、ようやく実を結び始めたわけです」
地元タウン誌記者はこう語るが、そんな明るい兆しの裏には“影”もある。あいりん地区の住民である労働者やホームレスたちの中には、今後を不安視する向きもあるのだ。
「『俺たちの居場所はどうなるんや』といった話もよく聞かれるようになりました。観光客が軽い気持ちで彼らにカメラを向け、トラブルになった例もある。加えて地元ボランティアは、街の急激な国際化が新たな犯罪の拠点になることを警戒している状況です」(地元記者)
街づくりは新たな段階に入ったようだ。