条件がそろった。いや、そろいすぎたといっても過言ではない。オープンに昇格したてで挑んだ前走の金鯱賞は5着。この結果が全能力を発揮した結果ならGIでは明らかに足りない。しかし、猿橋助手はこう反論した。
「直線に向いて前が壁になっていた。それを立て直し、外に持ち出して勝ったサクラメガワンダーと0秒3差だからね。よく伸びたし、それだけ惜しいレースだった」と振り返った。実際、上がり3F33秒7はメンバー最速タイ。中京のような小回りで、不利を受けながら、これだけの脚を使えれば地力の高さは十分に示した。メガワンダーとの着差は勝負どころで器用に立ち回ったかどうかだけだといっていい。
しかも、デキはさらに上向いている。もともとが叩き良化型で休み明け4走目の今回はまさにピーク。「弱かった右トモにパワーがついて走りが安定した」と同助手が言えば、佐山調教師も「随分力強くなった。中京よりいくらかでも直線の長い阪神はいい」と、2003年ヒシミラクル以来のVを見据えている。ちなみに助手も厩務員も担当はすべて同じ。6番人気で快勝した激走の再現を狙っている。
追い風はまだある。ウオッカの回避により鞍上に武豊騎手を確保。昨年は菊花賞で4着に導き、ここ3走も連続騎乗しており癖を知り尽くす男の騎乗は本当に心強い。
その武豊は、ギアの父マーベラスサンデーで12年前の宝塚記念を制するなど、このレースは通算4勝と相性がいい。「走りなんかは父と似ている。一発あるかも」と色気を見せた。50回の長い歴史でも初めての父子制覇へ、天才のエスコートが光りそうだ。