今季の鳥谷は144試合出場、打率は自己最高の.311をマークし、8本塁打73打点の成績を残した。
鳥谷の魅力は打撃もさることながら、堅実な守備、選球眼の良さ、頑丈な体だ。遊撃手としての守備率は通算11年で、.985と高く、11、13、14年と3度ゴールデングラブ賞を受賞。11〜13年まで3年連続でリーグ最多の四球を選び、11年には.395で最高出塁率のタイトルを獲得している。
そして、レギュラーを獲った2年目の05年以降、10年連続で全試合出場を達成し、現在1466試合連続出場中(歴代3位)。12〜14年にわたって、遊撃手としては史上初の3年連続フルイニング出場も果たした。
そんな鳥谷に、ナショナルズなどが興味を示しているが、米FA市場での評価はそれほど高くはない。そんな背景があるのは、西岡剛(現阪神)、中島裕之(アスレチックスからFA)、田中賢介(前レンジャーズ傘下3A)らの、日本人内野手の失敗例があるからだ。
10年オフにポスティングシステムを利用して、ロッテからツインズ入りした西岡は3年契約を結んだが、結果が残せず、自らの希望で3年目の契約解除を申し出て、日本に帰還。
中島は12年オフ、西武からアスレチックスにFA移籍したが、2年間でただの1度もメジャー昇格を果たせず。球団は3年目の選択権を行使しなかった。
田中はメジャー契約を勝ち取れず、ジャイアンツ時代の13年に1度だけメジャーに昇格し、15試合に出場したが、その際は内野手失格のらく印を押され、外野にコンバートされての昇格だった。レンジャーズに移った今季は、メジャーに上がれなかった。
昨季、今季と貴重なサブとしてプレーした川崎宗則(ブルージェイズからFA)も、マリナーズ時代を含め、3年間マイナー契約が続いた。
過去をさかのぼると、西武時代にトリプル3(3割、30本、30盗塁)を達成したこともある松井稼頭央(現楽天=メッツ→ロッキーズ→アストロズ)でさえ、メジャーでの7年間は苦労をしいられた。
日本人内野手で唯一成功したといえるのは、05年にホワイトソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した井口資仁(現ロッテ=ホワイトソックス→フィリーズ→パドレス→フィリーズ)くらいなものだ。
そんな事情で、メジャーで日本人内野手の評価は低いのだが、鳥谷は西岡や中島と同等で、松坂大輔とレッドソックスとの大型契約もまとめた大物代理人のスコット・ボラス氏が付いたこともあり、なんとかメジャー契約は確保できそうだ。
そうなると、年俸はどれくらいになるのか? 1つの指標になるのは中島の例。中島は遊撃のレギュラー候補として期待され、2年総額650万ドル(当時のレートで約5億4600万円)プラス出来高の好条件で契約した。米国に渡る前の西武での年俸は2億8000万円(12年)であったため、西武時代とほぼ同額だった。
ただ、中島の失敗例があり、同じ遊撃手の鳥谷に提示される条件は、中島のケースより下回る可能性がある。鳥谷の今季年俸は3億円だが、幸い現在は円安。1年260万ドルの契約が勝ち取れれば、日本円で今季とほぼ同じ額となる。1年300万ドル以上の契約となれば、ラッキー。円安の恩恵を受けて、年俸が極端に下がることはなさそうだ。
※年俸はすべて推定
(落合一郎)