山岡は共闘しているはずの野党の同じ国対委員長、共産党の穀田恵二、社民党の日森文尋と個別に会って、平成21年度予算関連法案について話し合い、「この不景気の時、やたらと審議の引き延ばしをしても意味がない。とにかく年度内成立に応じよう」と持ちかけたが、穀田は反対、日森も回答を保留した。
「なにも、そう急いですることはない。野党各党が個別に、それぞれ行動すればいい」という考えが民主党を除く野党間にあるのは確か。さながら、同床異夢だ。
なぜ山岡がこんな言動をするようになったか。いうまでもなく小沢一郎代表の秘書が、公共事業受注企業(西松建設)からの政治献金問題がある。小沢は「この献金による逮捕は国策捜査だ」と発言。国民の間に「やっぱり小沢だね。田中(角栄・故人)、金丸(信・故人)のカネにまつわる悪いところをそのまま引き継いでいる」といった自身への不信を、なんとか払拭しようとしてのものだった。
今までの民主党の主な役どころは“小沢教”であり、党内では誰一人として小沢に対しては口も利けなかった。しかし、小沢の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件を受け、党政治改革推進本部役員会で政治資金規正法の見直しが俎上に乗せられた。もちろん、その議論の中心になるのが「公共事業受注企業からの政治献金全面禁止」を打ち出すかどうか。小沢の判断次第だが、小沢はことのほか慎重な姿勢を示している。
一方の自民党も西松建設からの資金提供(パーティー券など)で閣僚などがスネに傷を持っている。あまり“大口”は叩けない立場にある。
国会で、これでもかとばかり中傷合戦を展開していた自民党と民主党はなぜか示し合わせたように、この献金問題などカネのことは言わなくなっている。
共産党や社民党は、このチャンスを逃している。社民党内には、今回の事件は共闘している民主党のエラーで、あまり接近して自分たちも砂を被りたくないと、そんな姑息なことを考えて一歩、下がっているフシさえある。国会で積極的に議論に加わらない方がいい、と言わんばかりなのだ。
そんなわけで、国会におけるカネと政治の問題は、四海波静かの状態。
「与野党とも同じ傷を舐め合っている。鳩山も言わないし、山岡も民主党内で口をつむんているのは、口を開いてシッポを掴(つか)まれたくないからだ。自民党にしても、そうだ。藪から蛇でも出したりしたら、今は致命傷になる」(政治ジャーナリスト)
自民党、民主党ともに今は、“イワザル”の心境なのだ。(文中敬称略)