「3時間30分という『時間制限』を設けた目的は、試合時間の短縮です」(球界関係者)
ペナントレースの開幕日、時間制限などが話し合われた臨時・実行委員会が開かれた際(3月15日)、『2010年シーズンの平均試合時間表』が議論のたたき台に上がっていた。昨季の試合平均時間だが、パ・リーグは3時間18分。セ・リーグは3時間17分。延長戦は両リーグで合計82試合(議論に使われたデータ表では交流戦が両リーグにカウントされていた)。この82試合のうち、「3時間30分を越えた延長戦突入の試合は「69試合」もあった。
延長戦で3時間30分を越えた場合、新しいイニングには入らない。ということは、この「69試合」は全て引き分けでカウントされるわけだ。その影響は大きい−−。プロ野球解説者の1人が、各球団の監督、コーチたちの胸中を代弁する。
「セ、パともに試合平均時間が約3時間20分ですから、試合終盤は時計を見ながら、救援投手を投入することになります。昨季、3時間30分を越えた延長戦が69試合もある? その69試合の延長戦の試合が全て『引き分け』に変わるわけですから、勝っているチームは投手を細かく投入するなどして時間稼ぎをし、新しいイニングに入れなくさせます。そういう姑息な時間稼ぎの作戦も増えるでしょうね」
昨季、延長戦10試合を経験した埼玉西武を例に取ってみると、たしかに『勝率』が変わる。西武の延長戦の成績は1勝8敗1分け。この延長10試合のうち、3時間30分を越えたのは7試合で、1勝5敗1分け。この7試合全てを「引き分け」で計算し直すと、西武のペナントレースの成績は、78勝65敗1分けから「77勝60敗7分け」と変わり、勝率は5割4分5厘から「5割6分2厘」まで上がる。
ペナントレース首位の福岡ソフトバンクは、3時間30分強の延長戦が15試合あった。成績は、7勝3敗5引き分け。埼玉西武と同じように、この15試合全てを引き分けに計算し直すと、69勝60敗15分け。勝率は5割4分7厘から「5割3分5厘」まで落ちる。
つまり、ペナントレース優勝チームは埼玉西武に入れ代わるのだ。
「昨季のクライマックスシリーズ第1ステージはロッテが2連勝で流れを掴みましたが、2試合とも延長戦で、試合時間は4時間を越えています」(前出・プロ野球解説者)
現時点で、ポストシーズンマッチの試合形態は『未定』…。
3時間30分を越える試合をすべて「引き分け」にカウントする計算式を、セ・リーグにも当てはめてみたが、こちらは、順位変動は見られなかった。ただ、首位・中日の勝率が少し落ちた。79勝62敗3分け・勝率5割6分0厘が、「73勝58敗13分け・5割5分7厘」に落ち込む。2位・阪神とのゲーム差は「1」から、「0.5」に縮まるので、甲子園の浜風が“イタズラ”を巻き起こす可能性もゼロではなかったわけだ。
埼玉西武が延長戦の勝率が悪すぎたのは、救援投手層の薄さと、別人のように豹変してしまう打線の脆さだろう。
「今季もシコースキーとグラマンをストッパーに予定していますが、両外国人投手とも帰国してしまいました。現地でどれだけ調整しているか分からないし、このままだと、西武はゲームセットの瞬間までハラハラさせられるでしょう」
救援投手がピリッとしないので、今季の埼玉西武は「勝ちゲームを同点にされる」危険性も高そうだ。
いずれにせよ、ストッパーの仕上がり具合が「時間制限」を設けたペナントレースに多大な影響をもたらすだろう。低反発の新・統一球の導入もあるだけに、投手力の強いチームが有利になったのは間違いない。