さて、今回は2002年第7回優勝馬テレグノシス(父トニービン、美浦・杉浦宏昭厩舎)にスポットを当てた。圧倒的な人気を集めたタニノギムレット(このあとダービーを優勝)が、皐月賞に続き3着に敗れる番狂わせに場内は騒然となった。
見事な“敵役”を演じたテレグノシスは皐月賞TR・スプリングSで、タニノギムレットに胸を借りた恩返し(?)を最高の形で結実させたのだった。担当の長島五郎厩務員は、感慨深げに振り返った。
「スプリングSで直線、大外を回ってタニノギムレットの2着したあの脚を見て、どのレースか分からないが、重賞を獲れると確信した」
それからわずか1カ月半後に天下を獲るとは、お釈迦様でも想像がつかなかったのではないか。
第三者はNHKマイルCの勝利を“棚から牡丹餅”というが、決してフロックではなく、確固たる実力が備わっていたのだ。ターニングポイントとなったスプリングSは、「勝浦(騎手)が将来を見越して先行から追い込みへ、脚質転換を試みて結果を出したことが大きかった」と長島厩務員は強調した。
晴れの舞台ではタニノギムレットのお株を奪う“豪脚”をさく裂させた。4角14番手から強襲、立ち木を倒す勢いでゴール板を駆け抜けた。2着アグネスソニックを1馬身3/4差突き放す圧勝劇だった。
これほどの馬も入厩してきた時の第一印象は「線が細くて牝馬と見間違えたほどだった」と長島さんは笑った。しかし、光るものはあった。「とにかく、気性は激しかった。走る馬に共通していることだけどね。気性の激しさはレースに行って、闘争本能にかわる」と聞かされ、なるほどと腑に落ちた。
彗星のように現われたテレグノシスはこの後、京王杯SC、毎日王冠を優勝したが、それ以降は15連敗。豪脚は沈黙したまま06年マイルCS(11着)を最後に引退。種牡馬入りした。
通算成績は33戦5勝(うち重賞はNHKマイルC、京王杯SC、毎日王冠)。