A:新型うつは、正式な診断名ではありません。
新型うつは、従来のうつと病態が異なります。従来のうつは、ストレスや過労が原因で心身が疲弊して発症します。無気力、引きこもり、抑うつ状態も強く、幅広い年代に起こります。
一方、新型うつは20〜30代の若い人に多く見られます。職場では抑うつ状態になるのに、プライベートでは明るく元気になるのが大きな特徴です。
●楽しいことがあると明るくなる
つまり、自分に都合の悪いことに直面すると気分が沈み、よいことや楽しい出来事があると、それまでの不調がウソのように元気になります。しかし、また都合が悪いことがあると憂鬱な気分に戻ります。こうした気分の浮き沈みを繰り返しますが、食欲はあり、よく眠れることも多いので、周囲から「なまけ病」などと言われることもあります。
原因として、人間関係がうまく築けないことにあると考えられています。そして、その遠因は親子関係にあるとの見方もありますが、この点は従来からのうつと同じです。新型うつと見られている人の中には、放っておくと本格的なうつ病に進展する場合もあると考えられます。
●まずは心理カウンセリングで対処を
職場で上司に叱られた経験や、仕事でミスを犯した体験がトラウマになり、似た場面に直面するとそれがフラッシュバックしてうつ状態に陥る、という専門医の指摘もあります。
受験戦争の激化、TVやゲーム、パソコンにかける時間が増えたことなど、生活様式の近代化による脳へのストレスの増加、コミュニケーション能力の低下が、人間関係のストレスに対処する力を低下させていると考えられます。
改善のためには、脳へのストレスを軽減させるよう生活習慣の見直し、そして、コミュニケーション技術の学習、実践でストレスの軽減をはかりましょう。ですから、ご質問の方は、服薬を治療の第一選択にしない道もあるわけです。
そのためには、心理療法やカウンセリングに力を注いでいる治療家を訪ねるとよいでしょう。
最初から薬に頼るのではなく、うつに陥りやすい自分の心のクセ(傾向性)を把握し、改善することです。
首藤紳介氏(湯島清水坂クリニック医師)
薬を使わない医療を実践。久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院母子総合医療センター等を経て、2010年より湯島清水坂クリニック(東京)に勤務。「福田−安保理論」をベースにした自律神経免疫療法により、「薬を使わない医療」を実践中。