これほど分かりやすいパフォーマンスに国民がだまされるはずがない。麻生首相が視察したのは、西早稲田のスーパー「三徳西早稲田店」。自分の目と足で物価高にあえぐ庶民の暮らしを確認し、今後の政策決定に反映させるというのが表向きの狙いだ。
しかし、共同通信が18〜19日にかけて実施した世論調査では、こうした小手先の苦労も実らず内閣支持率はダウン。そればかりか「経済政策に期待が持てない」とする理由を筆頭に、不支持率が前回調査から6.1ポイント上昇して39.0%に達してしまった。もはや支持率&不支持率の逆転は時間の問題だ。
同調査では、民主党支持層の53.7%が11月総選挙が望ましいと答えているのに対し、自民党支持層はわずか18.2%。来春もしくは任期満了まで先送りを求める声が計75%近くあった。与党内の空気とは異なり、自民党支持層は、解散すれば野党転落の悲劇が待ち受けていることをよく分かっているのだろう。
いまとなっては、内閣発足直後に解散しておけばよかったものを…と嘆くしかない。スーパーを何軒回ろうと、そう簡単に支持率上昇は見込めない。与党が選挙に勝つことを前提とする限り、当面、解散するタイミングはなくなったといえる。
ただ、一筋の光はある。同じ調査で麻生首相と小沢一郎代表のどちらが首相にふさわしいかという「党首力対決」では相変わらず麻生氏がリード。特に女性では、小沢氏に3倍近い大差をつける圧勝だったから、視察先にスーパーを選んだのは正しい選択だった。主婦目線の改革が期待できるとして、多少は女性票の伸びが期待できるからだ。
麻生首相はスーパーで一般客にまじり、乳製品や鮮魚、冷凍食品のコーナーを約15分ほど見て回った。パスタコーナーでは「小麦が上がったからね」と値上げを実感。好物のカステラを試食し、米粉を使ったカステラを購入する場面もあった。さらにJR高田馬場駅前にも立ち寄り、客待ちのタクシー運転手から売り上げ減少の話を聞いた。
一方、小沢氏は、東京・原宿のスタジオでタレントの上原さくらさんが司会を務めるインターネット番組に出演。「(政権が変われば)日本は相当変わる」と強調した。こちらは不人気を意識してか、普段の仏頂面をひっこめてスマイルを絶やさなかった。
しばらくはパフォーマンス合戦が続きそうだ。