「モノには重さがあります。そして、その重さはどれだけ遠くにあろうと、その物質の特性と重力、遠心力を物理法則に当てはめると判別が出来ます。
ある日、「21cm線」というスペクトル光線を使い星雲を包むガスの数値的特性を導きそれに物理法則を当てはめると望遠鏡で見える状態では説明の付かない質量がはじき出されたのです。ここから「暗黒物質」の存在が研究者の間で盛んに議論されるようになりました。そこに物質は存在している。だが見えない。
「不思議な話ですが『暗黒物質』はすでに常識となり、研究は次のステップに進んでいます」
学者でも解読が難しい話なので、われわれの理解が届かぬのも無理のないことではあるが、誤解を恐れずに話を端折ると、重さだけが計測され、モノはない。しかし、重さがある以上そこに物質があるに違いないという話だ。
「さらに観測機器の発達により、『暗黒物質』よりももっと小さい『暗黒エネルギー』というものが存在し、全宇宙の75%はこの『暗黒エネルギー』で構成されているという仮説も今や常識となっています。しかし、このどちらともその正体はわかっていません。素粒子なのか果たしてそれよりももっと小さいほかの『何か』なのか…各国の研究機関はこの物質の解明に躍起になっています」
難しい宇宙物理学の話がわれわれの頭を混乱させるが、その研究者が次に放った言葉はわれわれを正気にさせるに十分な内容であった。
「もともと『暗黒物質』は宇宙の起源に関わる研究でした。しかし、研究が進むにつれ物理学の総法則といえる相対性理論ではどうしても説明できない事態が出てきたのです。そして、その部分こそが時空を越える理論の証明になるのではないか、何万光年先に存在する生命体が地球に飛来するという謎の解明に繋がるのではないかと一部の科学者の間でささやかれ始めました。現在では、『暗黒エネルギー』こそが全く想像の付かない生命体の基礎構造の一部ではないかという仮説も出ています。現在、『暗黒物質』に関しては天文学者が中心となって研究が進められています。しかし、物質の正体がもう少し解明されれば即座に研究カテゴリーは物理学となります。そうなれば研究者の質も研究予算もケタが変わってきますので加速度的に宇宙の謎が解明されていくはずです」
宇宙を包む闇の正体、それこそが「暗黒物質」であり「暗黒エネルギー」であり、この「暗黒」の謎を解明することが地球外生命体の謎の解明に繋がるというのだ。そしてわれわれの情報では某国の研究機関ではすでに「暗黒物質」を捉え観測する機器の完成が目前に迫っているという。しかも、その某国とはここ日本だというのだ。果たしてわれわれが生きている間に「暗黒物質」「暗黒エネルギー」の解明は可能なのか?そして、その「暗黒」の解明はわれわれの未来を明るく照らすものなのだろうか?すべては今だ闇の中である。
(写真(上)=スペクトル光線(21cm線)で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができる。この結果と遠心力・重力の釣り合いの式を用いて星間ガスの質量を計算できる。すると、望遠鏡で観測できる物質の約10倍もの物質が存在するという結果が出た)
(写真(下)=延々と続く暗闇のほとんどは「暗黒エネルギー」によって構成されている)