西谷氏は、中国の現状を知るべく2009年から6年間上海に移住し、さまざまなアルバイトを経験。今年発売した『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)が話題となっている。同番組では、その中で現地にある寿司屋の不衛生な環境や、“パクリ遊園地”の実情について報告した。
西谷氏が伝えたところによると、“パクリ遊園地”は現地で“ユーロパーク”と呼ばれているという。白人文化に対する憧れから命名されたらしい。その入口には、「UNIVERSAL」と書かれたユニバーサル・パークス&リゾーツのシンボル・地球儀もある。また、ディズニーパークにもあるビックサンダーマウンテン、スペースマウンテン風のマシーンなど、過去にニュースでも取り上げられたアトラクションの写真を次々と紹介した。
これを見て、ゲストのぱいぱいでか美が「乗った時に怖い感じってないですか?」と質問すると、西谷氏は「そっちの方の怖さもあります。何の保証もない」と断言。スピードワゴンの2人は「その(事故を起こしかねない)スリルもあるんだ…」と、驚きを通り越して呆れていた。
また、西谷氏がユーロパークで働いている間に疑問に感じたのは、ディズニーの主要キャラクターであるミッキーやドナルドダックの被り物がなかったことだそう。やっと倉庫で埋もれた被り物を発見し、被っていいかスタッフに尋ねると、「いろいろあって、これは上層部からの判断で今は使えなくなった」と拒否された。文字通りお蔵入り状態だったという。おそらく本家から厳しい指摘が入ったのだろう。
中国の“ユーロパーク”は、アトラクションのみならず、ディズニーや日本のアニメをまねたキャラクターが建造物に描かれている。また、それと同様の着ぐるみに入ったスタッフが来場者を楽しませている。中国以外の先進国であれば完全にアウトだが、問題視されてもなぜなくならないのだろうか。
他の先進国の場合、大々的に“パクリ遊園地”を建立するのは不可能だろう。ディズニーや日本のアニメをまねたキャラクターがいる遊園地は、もちろん著作権侵害で訴えられてしまう。
2001年に中国は、著作権法を改正した。日本と同様に「他国の著作物を自国の著作物と同様に保護する」としている。しかし、中国国内ではその法律そのものが機能していないところもあるという。もし著作権侵害として裁判を起こすとしても、原則として中国国内の裁判所で損害賠償請求や差し止めをする必要がある。他国企業は正しい決定を得るのは難しいと判断し、裁判を起こさずに放置せざるを得ない状態となっているようだ。
「妙な話ですが、最近ではむしろ“パクリ遊園地”に行きたいと興味を示す人も出ています。ライセンスからいってあり得ない世界が、むしろファンタジーに映るのかもしれません。しかし、中国の都市部では“パクリ遊園地”が消えつつあります。2016年には上海にディズニーリゾートが完成し、2020年にはユニバーサルスタジオ北京のオープンが予定されていますから、やがて廃れていくのは間違いないでしょう」(エンタメライター)
「上海ディズニーを倒す」と“パクリ遊園地”の再建を図った、ワンダ・グループ(大連万達集団)の『ワンダ・シティ』は、昨年7月にテーマパーク事業の91%を融創中国控股に譲渡すると発表した。ワンダのブランド名は残し、事業は今も継続しているようだが先行きは不明だ。
日本のみならず先進国にとって、ある意味で衝撃的だった“パクリ遊園地”。日本がバブル期を終えて消滅した“郊外の遊園地”のように、ひっそりと消えてゆく可能性は高いだろう。