「強い馬」という概念をどこに置くかにはいろいろあるだろうが、基本は走破タイムとラップ。「強い馬」は上がり3Fのラップの中に、キラリと光る蹄跡を残しているものだ。
その典型的なサンプルを見ることができるのがウオッカ。同馬の起点は芝1600メートル1分33秒1で走った2歳暮れの阪神JF。そして、ラスト2Fを連続して10秒5〜8前後の途方もないラップで固めたダイワスカーレットとの桜花賞の一騎打ちが、そもそもの出発点だったように思う。
となると、今年のデイリー杯2歳S。阪神JFよりももっと早い段階で芝1600メートル1分33秒1というレコードで走ったシェーンヴァルトは、よほどの早熟かアクシデントでもない限り、後々、GIの1つや2つは取れる計算になる。
なんて、もう1つ前の札幌芝1800メートルを1分49秒3という、父ジャングルポケットの札幌2歳Sをほうふつさせる記録で勝ち上がった段階で、デ杯のアレコレはある程度、予測できていた。しかも、マイルではなく、中距離ベースの競馬で確たる記録を叩き出したということは瞬発力だけではなく、クラシックを乗り切るだけの、「底力」の証明にもなる。
ちなみに、デ杯で退けたホッコータキオンは、1走前の野路菊Sを芝1800メートル1分46秒8のレコードで駆けている。デ杯のレコードは、二重三重の記録が積み重なって生まれたという点で、付加価値も相当高い。
まっ、パドックで着用している、あのパシュファイアーがミョーに怪し気だが(笑)、気難しさと、北村友騎手がGIにビビりさえしなければ、久々にクラシックまでを見据えた朝日杯馬が誕生するはずだ。
当面の敵は、前記ホッコータキオンということになるが、一角崩しがあるとすれば、まずは東スポ杯2歳S2着のブレイクランアウトと、サンカルロ。本年の東スポ杯は、前半1000メートル通過が61秒0のスロー。11秒6→11秒4→11秒3(34秒3)という上がり3Fのレースラップが示すように、マイラーにはとっても走りやすいスローの瞬発力勝負となった。そこで、2着に競り負けたブレイクランアウトは、「最後は隣の馬をチラチラ見て、本気で走らないようなところがあった」と、武クン。それらを踏まえると、ブレイクラウンは集中力の持続しやすいマイルの流れの方が合うだろうし、個人的には距離も1600メートルまでがベストのように思う。折り合いに苦労していたサンカルロにも、同じことがいえるのかもしれない。
新潟2歳Sの覇者セイウンワンダーも、もちろん軽視はできないが、中間、順調さを欠いた上に、今年は秋以降の中央場所でデビューした馬たちのレベルが高い。ここは正念場だろう。
ホッコータキオンとの兼ね合いがカギだが、ミッキーパンプキン(父ダンスインザダーク)は、決して非力な逃げ馬ではない。惑星に警戒。京王杯2歳Sのゲットフルマークとフィフスペトルはレースっぷりを見ると、1400メートルが限界。レベルが高くなると、スプリンターにマイルはキツい。