真っ赤な鼻高面に鳳凰の冠、赤い装束で手には鉾。この出で立ちで鉾を突き出し、また身を反らし、膝を深く曲げたりしながら笛や太鼓の囃子にあわせて舞う。勇壮な中にもどこかユーモラスな舞は古い伎楽「竜王の舞」が原型とされ、若狭地方では盛んだ。ことに宇波西神社は特別で、使われる面は、はるか昔、漁の網にかかって引き上げられたものと伝えられている。
宇波西神社は北陸道唯一の官幣大社として栄えた式内社。祭神は神武天皇の父・鵜草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)で、日向国から渡って来たのが始まり。最初の鎮座地・日向(ひるが)から現在地の久々子湖岸に遷座したのは大同元年(806年)のことという。
祭は、太刀を頭上に掲げて様子を見守る出神家(現・渡辺家)の登場で始まる。渡辺家は日向国から神霊をお遷しする際に付き従った一族の子孫とされ、故事に基づき代々この役割を担う。また舞手も、海山地区他の四集落の若者のみが順次担当する決まりだ。
舞人は四方をしっかりガードされている。転倒させれば豊漁豊作になると伝えられるからで、隙を窺う氏子が多いせいだ。今年も舞の最中に二度ほど攻められ、思わず歓声に包まれる場面があった。この後、獅子舞、田楽、子供神輿と続き、春の風物詩は幕を閉じる。
来月5月1日には、美浜町の彌美(みみ)神社で王の舞が奉納される。こちらも同じく国選択の無形民俗文化財指定。見逃した方はぜひ。
(写真「警固の中で舞われる『王の舞』」)
神社ライター 宮家美樹