「1週前追い切りの感じから、もう豊君に乗ってもらわなくてもええな。心配することは何ひとつない」と高橋成調教師はうなずいた。
究極の仕上げを目指せば目指すほど、その頂はよく切れる刃物のように研ぎ澄まされ、ポイントはわずかしかない。やりすぎれば、あっという間に下降線をたどり、逆にケイコが不足すればそこまで届かない。
もう武豊の手を借りなくてもいいという師の言葉は、ラストランにしてサムソンがそんな難しい仕上げに成功した証しといえる。
有馬記念は3度目の出走だ。苦い思い出しかない。3歳で挑んだ一昨年はディープインパクトの壁にはじき返され、昨年は調整がうまくいかなかった。「夏場に馬インフルエンザの影響で凱旋門賞挑戦も回避したし、いろいろと予定が狂ったからね。去年は満足できる状態ではなかった」と振り返った。
その点、今年は描いた通りのステップを踏んできた。凱旋門賞で悔しい思いをした。ジャパンCは武豊騎手が落馬負傷のため、急きょ、石橋守騎手に乗りかわり、思うようなレースができなかった。それでもローテーションに狂いはなく、叩き良化型らしくデキはきっちり上向いてきた。
「フランスでは結果を出せなかったけど、穏やかな環境で調整できていい夏休みにもなった。とにかく去年とは毛ヅヤ、体の張りともにまったく違うから。ベストの状態で送り出せる」
鞍上の武豊も年内絶望といわれた右腕尺骨の骨折から、先週の朝日杯FSで復帰した。不振の名馬&有馬でラストラン&武豊といえば、1990年のオグリキャップが今でも鮮明によみがえる。
「彼も有馬で勝つつもりでやってきたはず。大丈夫や」と師は全幅の信頼を置いている。暮れの大一番。寒くて熱い中山には、やっぱりユタカがよく似合う。
【最終追いVTR】DWコースで併せ馬を行い、6F78秒9→63秒2→50秒9→39秒1→12秒9をマーク。直線でパートナーと馬体を併せてからはこの馬らしい好気合を見せた。追い出してからの加速も早く、一時は1馬身完全に抜け出した。ゴール前で手綱を抑えた関係で最後はクビ差先着となったが、反応の良さはこの秋一番だ。