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【帰ってきたアイドル親衛隊】日本武道館単独ライブの最年少記録はまだ破られていない岩井小百合

 ツッパリを代名詞にした横浜銀蠅が、80年代前半に大ブレークを果たした。その弟分として、紅麗威甦(グリース)や嶋大輔などもデビューをし、銀蠅一家として注目を浴びた。銀蠅一家は、強面なツッパリ集団だったが、1983年に、可愛い女の子が妹分として加入することになった。それが岩井小百合である。

 岩井はポニーテールが似合う中学3年生。ツッパリとは程遠いキャラであり、まさに清純派アイドルだった。デビュー曲は『ドリームドリームドリーム』というツッパリとかけ離れた「THEアイドル」という感じの曲で、一気に私の興味が向かっていった。そのデビュー曲の発売は1983年1月12日。デビュー当日には、アイドルの聖地でもあるサンシャイン噴水広場でデビューイベントが開催された。

 もちろん私もここに参加するために、現地へと行くことにした。ここまでは良かったのだが、現地に着くと人の数がすごいことになっている。どこの位置に移動しても観れる状況ではなく、現場にいながら姿を見ることすらできず、歌声をだけを聞くというシュールな現場になってしまった。後に動員人数が発表されたのだが、集まったファンの数は、何と1万人を超えていたという。

 輝かしいスタートを切った岩井だが、私にとっては最悪のスタートとなってしまった。悔しい思いをしたデビュー日だったが、ようやく岩井に会うことができたのは、この年の7月に発売された4thシングルの『恋あなたし・だ・い!』の新曲発表イベントである。

 デビューから半年が経ち、すでに大人気であり、デビューイベントのサンシャイン噴水広場ほどでは無いが、かなり多くのファンが集まっていた。私は後方で写真を撮るにもポジションがあまり良くなかったこともあり、この日は撮影を断念して、ひたすら応援に徹していた。確かこの日にサプライズ発表として、日本武道館でのファーストコンサートの開催が発表された。この時はまだ14歳だったが、コンサートが行われた9月の時は、15歳1か月だった。単独の女性のソロコンサートの最年少記録を作ったのだ。今でもこの記録は破られていない。こんな大事なコンサートに私は行くことができなかった。単純にチケットが取れなかったという理由だ。当時中学生だったこともあり、大金を叩いてチケットを買うこともできず、今でも思い出すと悔しさがこみ上げてくる。しかし悔しがっていてばかりいてもアイドルを楽しむことはできないので、常に前向きになって、精力的に現場へ出ることに心がけていた。

 84年の3月に発売された『早春メモリー』の新曲キャンペーンに行くことにした。場所は千葉県の八千代台ユアエルム。なぜか家からかなり遠い場所を選んでしまったが、前日に急に岩井に会いたいという気持ちになっていたからだ。なので場所とか時間とか関係なく行くことに決めてしまった。当日はかなり風が強くて寒かった。まだ3月に入ったばかりだったこともあり、冬の野外という拷問のような現場だった。

 それでも岩井を観たい気持ちが強く、イベント中は寒さなんて忘れるほど熱くなっていた。白いベレー帽を被って登場した岩井は、まさに天使である。握手会では、冷え切った私の手を強く握り締めてくれて、一瞬だが温もりを与えてくれた。

 しかし楽しい時間はそう長くは続かなかった。岩井が高校を卒業した87年の春を最後に新曲のリリースも無くなり、引退発表も無いまま芸能界からフェイドアウトしてしまった。それから数年後に朝のワイドショーでレポートをやっていた時期もあったが、次第にその番組も出なくなってしまい、またまたフェイドアウトとなった。このまま完全に消えてしまうのかと思っていたところ、何とパチンコ雑誌にライターとして登場しているではないか。この頃に会うことはできなかったが、元気に頑張っていることがわかっただけで、満足できていた。

 それから数年後、確か2000年くらいに、岩井のインタビューをするという仕事が舞い込んできた。私にとって奇跡的なオファーであり、インタビューでは当時を振り返り、付き合っていた彼氏のことまで赤裸々に告白してくれた。インタビュー時間は約1時間だったが、聞きたいことが多すぎて、時間が足りなくなるほどだった。最後に以前に買っていた岩井の著書を取り出すと、そこにサインを書いてくれた。可愛くて優しくて、30歳過ぎても素敵な女性だった。最高の思い出をありがとうと言いたい。

 この頃から音楽活動を開始するのだが、2003年には結婚して、翌年には出産。出産後は家族でアメリカに移住して、アメリカで2人目の子供も授かった。現在はどうしているかわからないが、どこかで幸せに暮らしていることだろう。私も元気にしているので、いつか岩井と再会できる日が来るのを待ってみたいと思う。

(ブレーメン大島=毎週土曜日に掲載)

【ブレーメン大島】
 小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしの顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。

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