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「育成でも出来るんだ」オリックス・榊原翼の“怪童”物語が今、幕を開ける

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榊原翼

 「気持ちが…」

 育成出身の高卒3年目、榊原翼はシーズンが始まっても第一声に必ずこの言葉を出していた。大きな体には似合わない弱気に聞こえる言葉だが、開幕3戦目に先発した時の榊原はテレビ越しにも分かるほど、緊張で強張った表情をしていた。聞けば、札幌入りした時から緊張でガチガチだったという。しかし、2度目の登板となった7日の楽天戦では、まだ回によって波があったものの6回を1失点に抑え、勝利投手の権利を持ったままマウンドを降りた。この試合、増井浩俊が救援に失敗したため、初勝利はお預けになってしまったのだが、マウンドを降りてベンチに座っている榊原を見ると、常に大きな声を出している姿が見られた。これこそが本来、榊原が持っている姿である。

 「(収穫は)ありましたね。四球は相変わらずでしたけど、粘れました」

 勝ち星はつかなかったが、本来の姿を取り戻せた安堵からか、この試合に関して落胆することはなかった。3度目の正直として臨んだ今回の登板は雨天中止があった関係で、登板間隔が空いてしまったが、一軍に帯同することで、雰囲気に慣れてきたのは間違いないだろう。また、同期で親友でもある“神童”山本由伸の快投が刺激になったのは言うまでもない。

 「あいつは化け(もの)ですよ(笑)」

 榊原は由伸のことを「化け」と笑いながら話していたが、由伸は自身のインスタグラムで、榊原を惜しみなく登場させている。17日に京セラドーム大阪に向かう際も、先発当日におどける榊原をアップしていた。

 「翼とはライバルというより、一緒に盛り上げていきたいというか、切磋琢磨していきたい関係ですね。これは(同期の山崎)颯一郎も含めてですけど」

 「同期は宝」と日頃から話している由伸は、榊原の存在についてこのように話している。昨年は榊原が先発した際に、由伸にリレーして2人でお立ち台に上がりたいという野望を抱いていたが叶わなかったが、今年は2人揃って開幕ローテーションに入った。榊原は「一緒に入った同期という意味では山岡(泰輔)さんも入ったので、(ローテーションの)6人中半分が自分らの同期なんですよ。これって凄いですよね」と驚きと喜びを隠せない様子だった。

 こうして迎えた3度目の先発マウンドは、吉田正尚の3戦連続ホームランで先制すると、「今日こそ榊原に勝ち投手になってほしくて、必死に打ちました」という榊原の球をキャンプから受け続けた若月健矢のタイムリーなど、4回まで毎回の4得点。榊原は6回を1失点でマウンドを降りた。この日も追い上げられたが、チームは逃げ切って2連勝。榊原に嬉しいプロ初勝利がプレゼントされた。この試合でも、榊原はベンチで声を出し続け、全力で手を叩きチームを盛り上げていた。そんな榊原を野球の神様はしっかりと見ていたのだろう。

 「いや、ホントに幸せです!」

 初のお立ち台でヒーローインタビューを受けた榊原は「幸せ」という言葉を真っ先に出した。マウンドで感じるものとはまた違う緊張感から、ぎこちなさもあったが、とても初々しいインタビューで榊原の人柄が垣間見れた。

 「育成でも出来るんだというところを見せたいですし、僕が頑張れば………チームもついてくると思うんでもっと頑張ります!」

 今にでも泣きそうな雰囲気の中、何とか元気よく乗り切った。「ヒーローインタビューは許してください(笑)。次、頑張ります」。18日に先発する“神童”に最高の形でバトンを渡した榊原だが、豪快な榊原には“怪童”というコピーが似合う。今年は“神童”“怪童”コンビが新生オリックスを引っ張っていく1年目。榊原翼の怪童物語は幕を開けたばかり。次の試合も期待したい。

取材・文 / どら増田
写真 / 垪和さえ

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