「両監督にとって2人は、唯一、甘えられるというか、ホンネで語れる存在です。金本監督は高代コーチから『監督』と呼ばれると、『2人きりのときは(監督と呼ぶのを)やめてくださいよ』と話していました」(球界関係者)
チームが低迷したままなら、この両参謀の立場は危うくなる。
「伝統球団はよほどのことがない限り、1年で監督を解任しません。メンツがありますから」(同)
打線低迷の引責で内田コーチを失うことになれば、高橋監督は相談相手を失う。金本監督が高代コーチを失えば、超変革は成就できなくなる。
「高橋監督は若いので、ブレーンとなる後輩がまだ現役なんです。村田真一ヘッドが試合中、真横について采配の助言を送っていますが、内田コーチを失えば、また尾花高夫一軍投手コーチが幅を利かせてくるかもしれない。かつて、尾花コーチは原前監督と衝突した経緯もある。金本監督にしても、矢野燿大一軍作戦兼バッテリーコーチだけではとてもフォローできないでしょう」(同)
金本監督に対する不満はないものの、阪神内部には「内閣改造プラン」があるという。一連の打撃不振から出たらしい。「一軍に抜てきした若手の勢いが長続きしないのなら、掛布二軍監督を一軍コーチに昇格させては?」というものだ。
近年、阪神は一軍首脳陣と二軍スタッフのコミュニケーションがうまくいっていなかった。金本、掛布が監督になってそれが解消されたと言われていたが、二軍監督を決め直すとなれば、金本監督の腹心を出向させなければならない。それが腹心、矢野コーチだ。
「いま、二軍野手をトータル的に見ているのが、今岡誠打撃兼野手総合コーチです。片岡篤史一軍打撃コーチは一度指導者として失敗しているので、今岡コーチを代わりに一軍に上げるようです」(同)
また、フロントが抱く超変革の最終形は、金本監督の周りを'03年の優勝メンバーで固めること。藤川球児は将来のコーチ就任の含みを持って帰還したとされ、現阪神投手陣の信頼がもっとも厚い福原忍もいる。福原がまだ現役でやれるのならば、「兼任コーチ」昇格となるという。
「藤浪晋太郎を早くエースとして一本立ちさせたいと願っています。阪神だけではなく、日本のエースに育てたいとしており、その藤浪が昨季以上の成績を残せるのであれば、金本監督のコーチ人事の要望も聞き入れられるのではないか」(前出・ベテラン記者)
また、巨人フロントも高橋監督の脇を固める人材の今後を見極めている。阿部慎之助だ。
「今の成績では長く現役を続けられないでしょう。かといって、功労者ですし、本人が『辞める』と言うまではサポートすることになるはず。兼任コーチの打診があるかもしれない」(前出・球界関係者)
兼任コーチの打診、つまり高橋監督の現役最終年となった昨季と同じ道を辿ることになりそうだ。
フロントには高橋監督の強い味方もいる。大学の先輩にも当たる堤辰佳GMだ。巨人にはシーズン途中の獲得を含め、13人もの助っ人がいる。この堤GMが集めた“余剰人員”が、阿部などのベテランを欠いても、Aクラスに踏みとどまらせている要因という。
「巨人は阪神や広島とはファン層が違います。阪神は負けても応援してもらえますが、巨人は勝たなければファンが離れてしまう。勝つことを宿命付けらされたチームなのです」(同)
今後も巨人は補強を続けていくだろう。高橋監督に求められるものは「どんな野球がしたいか」ではない。
「ヨシノブを好意的に見るファンは多いので、そのファンの気持ちが離れないうちに優勝しないと」(前出・ベテラン記者)
「ファンの気持ちが離れないうちに」と懸念するのは阪神も同じ。高橋、金本両指揮官から「監督とは、自分のやりたい野球ができるとは限らない」との嘆きの声が聞こえそうだ。