すぐに砂糖10〜20gを摂るか、糖分を含む清涼飲料水を飲むこと。また、血糖降下薬による治療やインスリン療法を受けている人は、スティック・シュガーを持ち歩き、低血糖のサインを感じたらいつでも摂取できるようにしておく。アメやチョコレートでもいいが、砂糖の方が即効性があるという。
こんな一例がある。東京都内でリフォーム・メーカー営業担当のAさん(45)は、ヘモグロビン(Hb)A1Cが7.2%で、朝食直前に糖尿病の経口薬1錠を飲んでいた。
ある日、午後2時近くに突然、動悸とめまいに襲われてふらつき、救急車で病院へ搬送された。血糖値は低血糖ギリギリの70mg/dlの半分近い45だった。
その頃のAさんは、朝食を朝7時に摂っていた。だが、昼食は商談や打ち合わせでほとんどが2時過ぎ。そのために空腹時が長く続き、低血糖になる可能性が高かった。
また、Bさん(51)は夜中にたびたび目を覚まし、寝汗もよくかいていた。行きつけの医院で診察を受けると、低血糖の数値を示された。Bさんはやや太り気味だったことから、夜中の目覚めや寝汗は室温と肥満体形のせいと思い込んでいた。
医師から、それらは低血糖の典型的な症状と告げられ、自宅でできる簡易の自己血糖測定器を使い、目が覚めた際に測ってチェックを始めた。
Bさんは笑いながら、こう話す。
「そういう意識を持つだけで、数値の方も変わってきたように思います。もちろん良い方にですよ」
注意点もある。糖尿病の降下剤や低血糖薬にしても「薬の効かなくなる時間帯を知る」ということ。
ある糖尿病の専門医師は言う。
「不規則な仕事の場合、常に同じ時間に食事が出来るわけではないでしょう。昼食を抜かなければならないときもあるはずです。その時の薬の状態を知っておくことが大事で、医師とよく相談することがいいと思います。運動する場合も食事の30分後にしてください」
また、常日頃から運動不足を自覚したり、肥満型の糖尿病の人は「やせなくては」という強迫観念から、朝食前にジョギングなどをしようとするが、これも注意が必要である。
「運動をする前に、バナナなどで補食していればいいのですが、そうでなければ低血糖を起こします。食事直後の運動もいけません。血糖値がなかなか上がりにくい人もいるし、食事前の運動と同じリスクがありますので注意が必要です」(前出・専門医師)
糖尿病でなくても低血糖になりやすい人は、食事を3食摂るよりも、少量の食事を何回も摂る方が低血糖を避けられる。
糖尿病の人は、いざというときの自分の状態を医療機関に知らせるため、医療識別のブレスレットやタグを持ち歩くこともお勧めする。やはり自己管理も重要な事である。