初の古馬相手に加えて初コース。越えねばならないハードルはいくつかあるが、史上最強牝馬の呼び声高いブエナビスタなら、そんなものは朝飯前で片づけてしまうかもしれない。
松田博調教師は相手関係について「それが問題やな。まあ、やってみないことには分からんわ」と謙遜するが、斤量はハンデ並みの52キロ。札幌記念に管理馬を出走させるある関係者からは「あれは反則でしょ。もうあの馬はいないものと考えるしかない」と白旗ムードだ。
真の目標は、はるか異国の地にある。しかし、その前の壮行レースでコケてしまったら元も子もない。夏休み返上で下地をつくってきたブエナは2日に札幌競馬場に入厩。12日の1週前追い切りでも直線追われると鋭く反応し、6F79秒7、上がり3F38秒1→12秒4をマークした。
「いつも通り、あんなもんやろ。食いはいいし、何も段取りは変わりないわな」と指揮官。春先からの成長については、「体はひと回り大きくなってるかもしれへん。精神面はいつもと一緒や」と言葉少ないが、強い馬に特別なものはいらない。穏やかなトレーナーの表情が「ブエナ順調」を如実に物語っている。
舞台は脚質的に不利な小回り平坦の札幌だが、それは承知の上での参戦。むしろ、このぐらいのハンディを克服できないようでは海外進出などとはいっていられない。
「いつも通りケツからいって差せるもんなら、差したらええし…。そのあたりはジョッキーが考えて乗るやろ。一番の問題はジョッキーの減量かもしれへんな(笑)」
トレーナーは52キロで騎乗する安藤勝騎手をジョーク交じりに気遣う余裕すら見せている。
10月に迫った大一番に向け、どんな勝ちっぷりを見せるのか。もはや焦点は、その一点に尽きる。
凱旋門賞挑戦について松田博調教師は「今回の結果を見ないことには何ともいえんわな」と多くを語らないが、その周辺は世界制覇へ向け、すでに動き始めている。
現地での入厩先はM・ボラックバデル厩舎に決定。ボラックバデル調教師は2000年のジャパンCにレーヴドスカーを挑戦させた女性トレーナーで、同馬の現役時代のオーナーでもあるノーザンファーム・吉田勝己代表の縁からタッグを組むことになった。
今後のスケジュールについても、9月23日に出国する当初の予定を20日に変更。前倒しすることで現地での調整期間を少しでも長くする。また、輸送の負担を軽減するため、経由地も韓国・仁川からオランダ・アムステルダムへと変更された。これも日本馬として史上初の凱旋門賞馬になるため。陣営は細部にも目を光らせている。