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やくみつるの「シネマ小言主義」 ここまでやるか!激似すぎる登場人物たち「バイス」

 同時多発テロのあった2001年から’09年まで、ジョージ・W・ブッシュ大統領の下で「史上最強の副大統領(バイス)」として暗躍したディック・チェイニーの実像に迫った本作。

 つい、この間のことなのですが、チェイニーの名前は記憶にあっても、顔までは覚えていませんでした。

 で、画像検索してみますと、本当に同じなんですよ。これは、役作りとか、仮装なんてレベルを遥かに超えています。

 なんでも、ハリウッド屈指の“演技の鬼”と言われるクリスチャン・ベールは、本作のために約20キロ体重を増やし、1回約5時間の特殊メークを施して、半世紀にわたるチェイニーの軌跡を体現したそう。

 漫画で似顔絵を書く時は、顔を左右非対称にして口もとのわずかなゆがみを表現するのがコツなんですが、彼がしゃべる時の片方の口角が引き上がる感じまで完コピしています。

 そして、ブッシュ大統領、笑っちゃうほど似ています。海のこちら側から見ていても「あんな出来の悪そうなやつがなんで大統領に…」と思っていましたが、少なくともこの映画の製作サイドは同じように感じ、彼の「小者ぶり」を、重大発表している時の貧乏ゆすりなどで絶妙に表現しているのが痛快です。

 さらに、パウエル国防長官、ライス大統領補佐官と、出てくる登場人物がことごとく激似。特殊メークなのか、そっくりな役者をキャスティングしたのかは知りませんが、当時の政権の再現ぶりは徹底しています。

 だからこそ、しがない1人の男が「影の大統領」にまで上り詰め、イラク戦争まで導いて、その後のアメリカと世界の歴史を塗り替えてしまった事実が、悪夢のようなブラックジョークとして迫ってくるんでしょう。

 この映画、ゴールデン・グローブ賞をミュージカル・コメディ部門で受賞しているんです。かの地では、もはや笑うしかない「コメディ」なんでしょう。しかもこの映画を作るために、今も存命のチェイニー本人には了承を得ていないそう。訴訟社会アメリカで、相当に根性のある監督ですよね。

 監督に「トランプの映画を撮るつもりはないか」と聞くと、言下に「彼にその価値はない」と答えたと、パンフレットのインタビューにありました。見る方とすると、トランプのそっくりさんを、ちょこっと仕込んでおいてもらえたら、さらに笑えると思うんですが…。

 この映画の日本版、見たいですねぇ〜。あまりにアホらしくて、クスリともできない寒い映画になっちゃうかもしれません。

画像提供元:(c)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
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■バイス
監督・脚本/アダム・マッケイ 出演/クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェル 配給/ロングライド 4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。
■1960年代半ば、酒癖の悪い青年ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)は、のちに妻となる恋人のリン(エイミー・アダムス)に叱責されたことをきっかけに、政界の道へを志す。その後、型破りな下院議員のドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで働きながら政治の裏表を学んだチェイニーは、次第に魔力的な権力の虜に。大統領首席補佐官、国防長官になったチェイニーは、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に就任するが…。

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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中

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