現在のFA制度は、「国内8年、海外9年、ドラフトで希望枠が廃止になった07年以降入団の大学・社会人出身の選手は7年」になっている。この改正案で妥結するまでには紆余曲折があり、選手会が「FA7年が認められなければ、裁判で闘うことも辞さない」という強硬姿勢を示し、一騒動あった。最終的に選手会が振り上げた拳をおろしたのは、「満足はしていないが、一応、7年という数字が出てきたから。それとこれはあくまで暫定措置で、もう一度、見直しをするという約束もあったので」と、当時の宮本慎也会長(ヤクルト)が語る経緯があった。
その見直しの約束履行を迫る選手会が、改めて「国内も海外もFAはすべて一律で7年」という基本方針を突きつけてきたのだ。それだけに、12球団側とすれば、何か一つだけでも選手会が勝利をアピールできる見返りを認めないわけにはいかないだろう。たとえば、「海外も国内と同じ8年にする」とか、選手会が主張している「レンタル移籍制度」を認めるとかの妥協案だ。
もしも、選手会への回答が「現行制度のまま」となれば、選手会は黙っていないだろう。「見直しの約束不履行」を理由にして法廷闘争を蒸し返す可能性は高いだろう。そうなると、再び、12球団側が腰砕けになり、結局、なにがしかの見返りを認めるという、過去の悪循環を繰り返すことになりかねない。
12球団側にとっては、04年のシーズン中に起こった史上初の選手会ストライキの成功がトラウマになっている。オリックス、近鉄の合併から始まったパ・リーグ消滅の危機、1リーグ10球団制度の球界再編の動きに対し、古田敦也選手会長率いる選手会が真っ向から反対。「セ、パ6球団ずつの2リーグ制度死守」を打ち出し、ストライキまで敢行。ファンの支持を得る中、ソフトバンクのダイエー買収、楽天の新規参入もあり、2リーグ制度が存続して、現在に至っている。
この成功が選手会の自信になっており、何か起こると、奥の手の法廷闘争をチラつかせ、戦々恐々とする12球団が最終的に妥協するという図式が、現在の日本球界では出来上がってしまっている。が、財政難で経営危機に直面している12球団とすれば、いつまでもこんな弱腰な対応を繰り返せば、自らの首を絞めることになる。
「権利ばかり主張して、義務を果たさない選手会。選手の年俸も高すぎる。サッカーのJリーグが選手の年俸一律大幅ダウンで生き残りを図ったように、日本のプロ野球界も大ナタを振るう時だ」という球界OB、関係者の声も多い。「FA一律7年」を認めれば、スター選手のメジャー流出にさらに拍車がかかり、日本プロ野球界の存続が危ぶまれるだろう。選手会の要求を一蹴して、法廷闘争に突入するのもやむなしと腹をくくる必要もある。さて、そこまで12球団が足並みを揃えられるか。巨人のように、「FA一律7年はチャンス」と思っている球団もあるからだ。いずれにしろ、7月23日の選手会総会前に出される12球団の回答に注目だ。