『トシュカ』なる東京・西新宿に本社があった医療コンサルト会社が、上場を謳い文句に投資家の資金を集めながら破綻し、経営者が音信不通になっているのだ。
「これは相当、悪質な詐欺ですよ。しかも主役は、なかなか面白い人物です」
本誌は、金融筋からのこの情報を元に取材を始めた。すると、ビッグネームの投資家たちから億単位の金を巻き上げ、さっさと逃げた裏舞台を、元社員や金融関係者などが次々に証言。元株主全員への郵送方式のアンケートも実施すると、真っ黒い話が出るは出るは…。
さて、トシュカと言っても全くピンとこない向きもあろう。この会社は「薄毛は病院で治せる時代です」と盛んに宣伝している『新宿アイランドタワー・クリニック(医療法人社団萌永会・高橋茂樹理事長)』の経営母体だったところだ。2003年、このアイランドタワークリニック(以下、ITC)への医療コンサルタントを行う会社として設立されたのがトシュカで、トンズラした創業者は、東大合格者数33年連続日本一を誇る私立開成高校OBの森上信男氏(=仮名)という人物である。
自分の薄毛をさらけ出し、試用モデルとしてホームページにも登場する健気な森上氏だったが、取材に協力してくれた元株主O氏は、こう怒りをあらわにした。
「自毛植毛技術は、米国で広く普及している技術を応用した確かなもので、将来性に魅力を感じました。このクリニック事業のコンサル・マネジメントをする新会社を設立(=後述・株式会社トシュカ)して、クリニックの赤字解消後、新会社を上場するという投資話だった。しかも、紹介者はスイス最大のU銀行・プライベートバンカーS氏、上場企業SD社のN会長さんに至っては『森上社長は、人脈も、もうかるビジネススキーム作りも完璧。さすがは開成高校出身だ』と太鼓判。新会社の株主名簿には名古屋に本社を置く日本メナード化粧品と、その創業者である野々川大介会長や野々川純一社長の個人名まであるのですから安心して投資した。しかし、その上場話が全部ウソだった」
森上氏が目を付けたヘアケア業界は急成長を遂げて、今や約4233億円という巨大マーケットだ。(2014年・矢野経済研究所調査)
この市場で「病院」という規制に守られた既得権益を利用し、米国の新技術を導入。しかも、年収億単位の投資家たちが絶賛する「もうかるビジネススキーム」がある−−。投資家にとってはピカピカな投資案件というわけだ。
元株主O氏が激怒する『トシュカ』とは、一体どんな会社なのか。
「同社は2003年、東京、名古屋、大阪、福岡に展開するITCグループの医療コンサルを請け負う会社として、開成OBの森上氏が社長として設立。ITCの経営母体、つまりは親会社になった。同社には大手証券OBやメガバンク出身の財務担当者を据え、上場には必須の監査法人も、日本の4大監査法人の一つのA監査法人が担当していた」(元トシュカ社員)