私大病院治療技術部の理学療法士・新井雄二氏はこうアドバイスする。
「“うつ向きの姿勢”といえば代表的なものは、今や生活の一部に溶け込んでいるパソコン作業や携帯電話を扱う姿勢です。頭の重量に“うつ向きの姿勢”。首はその重さに耐えているわけですから、パソコンで15分作業したら30秒休む。15分デスクワークしたら椅子に深く腰掛けたまま頭と首の境目辺りを両手で組み、頭を後ろに反らせて30秒ほど首の筋肉を休める。こうしたことを実践できれば理想的です」
新井氏によれば、他の予防法についても、首を温めること。冷えると首の筋肉がどうしても硬くなり、首凝りは酷くなる。できれば、毎日熱いタオルを首の後ろ側に当てるなどのセルフケアを勧める。
「あとは首、肩に負担をかけない寝具(枕、布団)を選ぶこと。それに、車を運転するときなど、正しい姿勢を保つことも大事ですね。また、安易な自己流マッサージは、かえって悪化させる危険性もあるので注意してください」(同)
また「肩凝り」も、同じような症状といえる。前出の浦上院長は「肩凝りも冷えが原因で起きることが多い」とし、次のように説明する。
「肩が冷え過ぎると、やはり交感神経の緊張が続き、血管が収縮して筋肉の血行が悪くなり筋肉痛が起こります。肩の筋肉が酸欠状態になり、栄養が行き届きにくく、老廃物の蓄積を起こして、凝りや痛みを発します。もちろん、椎間板の老化(頸椎椎間板ヘルニア)やむち打ち症(むちうち損傷)など、骨の異常にも影響します。ですから病院、医療機関での基本的な治療を受ける必要が出てきますね」
また、前でも触れているが、「腎臓・腸・肝臓・胃」などの内臓の異常や病気(心筋梗塞、狭心症、糖尿病、高血圧)が原因で、首などの凝りに繋がっている場合もある。内臓が上手に働かないと血液の循環が悪くなり、首、肩凝りの症状が出やすくなる。
ただ内臓疾患があっても内臓自体に痛みを感じることが少ないので、その他の場所である首、肩などに痛みがよく出ると専門家は言う。
逆に言えば、肩や首こりの裏に、こうした内臓疾患が伴うということも認識しておく必要がある。
「当然、こうした場合は原因となっている病気の治療を優先することになる。お酒などの量を減らし、野菜中心の食生活に切り替え、内臓に負担を掛けないよう食べ過ぎにも気を付けなければいけません」(前出・浦上院長)
通勤電車でうつ向きながらスマホをいじり、会社ではパソコンに向かってデスクワーク。帰宅するとインターネットやテレビゲームにふけり、寝る前にはベッドや布団の中で読書をする…。
そんな毎日の繰り返しや、体形的にも肥満、なで肩、猫背、運動不足で筋肉が弱っているなどの自覚をお持ちのサラリーマン諸氏は「首・肩凝り」が起こりやすいといわれる。
寒さもいよいよ本番。首や肩を温かくし、うつ向きの姿勢を少しでも改める努力が必要だ。