8000万からのスタートとなったディープインパクト産駒最大の注目馬「ビワハイジの2008」(牡)。誰もが2006年に記録したセール最高価格の6億円超えを期待したが、結果は2億2000万円と昨年の最高額である3億円にすら届かなかった。
落札者は“トーセン”の冠でおなじみの島川隆哉氏(写真上)。島川氏は「血統うんぬんではなく馬自体が良かったからね。感動?あんまりないなあ。期待すればするほどすぐ壊れちゃうから」と、浮かれる様子は一切なかった。
セール史上4番目に高い3億3500万円で購入したトーセンダンス(父サンデーサイレンス)がわずかキャリア1戦で引退した苦い過去があるとはいえ、誰もがうらやむ“7冠ベビー”をゲットしたとは思えないトーンの低さだ。
ある牧場関係者が言う。「ディープの初仔が登場するからといって、馬主にそこまでの盛り上がりはないですよ。騒いでいるのは世間とマスコミだけ。まだ走ったことのないディープの子どもに、数十億円つぎ込むほど馬主はバカではない。それでも、お金のない零細馬主は指をくわえて見ていることしかできないんでしょうけど…」
ディープ産駒はこの日、誕生したミリオンホース5頭中3頭を占めたが、他2頭の父はすでに種牡馬として実績があるタニノギムレットとクロフネ。未知数が多い新種牡馬はリスクが大きいというわけだ。
今度はセレクトセール関係者が説明する。
「一昨年の6億円馬は世界でも貴重な血統だったし、引退後も繁殖で稼げる牝馬だったことが評価された形。今年はディープ以外の産駒も軒並み質が高かったというのもありますが、やはり“フサイチ”の関口さんがいないのはでかいですよ」
ともあれ現在は、バブリーだった数十年前とは対照的な経済情勢。ディープはファンに夢を与え続けたが、採算第一主義の馬主にとって、夢だけで大枚をはたく時代は終わったようだ。