公安関係者が語るのは、6月1日に発覚した年金情報の大量流出事件のこと。同事件では、日本年金機構の複数の職員端末から膨大な加入者情報が盗まれたが、そのサイバーテロの犯人像に、やはりと言うべきか、中国と北朝鮮の名前が浮上しているのだ。
ただ、政府筋にこうした見解が高まりだした背景には、理由があるという。それが、このサイバーテロの手口なのだ。
「実はこの事件には前段があり、昨年秋頃から霞が関の各省庁や政府関連機関、エネルギー産業や航空宇宙産業、金融機関など300〜500施設もの日本の中枢機関に膨大な不正メールが送信されていたのです。つまり、今回の年金情報の流出は氷山の一角。政府は否定しているが、パトリオットミサイルなど極めて重要な防衛文書も漏洩した可能性が高いのです」(同)
要は、その攻撃目標は年金情報の流出に止まらない大掛かりなものだったのだが、使われた手口はこれに輪をかけて周到だったと伝えられているのだ。
別の公安関係者が言う。
「重要施設に送られた大量メールには、受信者が開封しなければならない仕掛けが施されていた。例えば、『送信したメールに過ちがありました。訂正文を送り直します』などの件名が付いていたのです。今回の年金情報流出事件は、福岡の日本年金機構九州ブロック本部に送られたメールの開封に端を発しているが、その件名は『厚生年金基金制度の見直し(試案)に関する意見』で、送信主は竹村との偽名が使われていたという。これらメールは全て『.exe』という拡張子があり、ウイルスの排除システムを導入していなかったことが批判されているが、その周到さは個人ハッカーの比ではなかったのです」
また、外務省関係者がこう話す。
「盗まれた年金情報は、その一部が国内の運送会社のサーバーに一時無断でストックされ、遠隔操作で海外サーバーを経由して闇に消えたと言います。数百万件の年金情報を得るため、日本年金機構に何百回も偽メールを送り続けており、このやり口が中国や北朝鮮など、国家ぐるみのテロ説を加速させているのです」