例えば、「長頭人」と呼ばれる古代の人の頭蓋骨がある。英語ではコーンヘッドとも呼ばれている。これは、まるで食べ物のコーン(とうもろこし)のような形をした頭から名付けられた。これは中南米だけの話ではなく、世界各地で発掘・確認されており、古代文明を作り出した神々の遺体ではないかとビリーバー(盲信者)の間で言われているのだ。
これらの「長頭人」は偶発的に発生したものか否かは判断しかねるが、一方で人工的に作られた奇形の「長頭人」もいる。ヨーロッパや南米では長い頭が高貴の証とされてきたため、赤ちゃんの頭を布できつく縛ったり、二枚の板で挟み込んで意図的に長い頭を作り出した。つまり、人為的に赤ちゃんが長頭人化されてきたのだ。また、エジプトなどではファラオは歴代「長頭人」であったと言われている。日本の貴族たちがかぶっていた長い冠や古代エジプトのファラオの帽子なども「長頭人」への憧れであった。
我々人類はどうやら長い頭に神を垣間見るらしく、東洋では“寿老人”や“福禄寿”が長い頭部で知られており、日本では長く変形した頭蓋骨を「外法骨」と呼んで呪術に使ってきた。平安時代には変わった頭の形をした人々は死後、自分の頭蓋骨が盗まれることを普通に心配していたという。
ちなみに、豊臣秀吉や松永弾正の前で幻術を披露し、二人を恐怖させた逸話で知られている果心居士が代表的な存在とされている、「外法師」が駆使するのが「外法骨」であり、変形頭蓋骨や有名人の頭蓋骨が珍重されたという。
そう言えば、妖怪の総大将(総大将と認定されたのは昭和初期である)とされる「ぬらりひょん」も長い頭を持っている。ひょっとすると「外法骨」への幻想が「ぬらりひょん総大将説」のベースにあったのかもしれない。
頭脳明晰を連想される大きい頭や長い頭は、神や宇宙人という設定で人々に幻想を与えてきたのだ。
(山口敏太郎)