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夜を棄てたキャバ嬢〜罰金システムに苦しんでいた理恵子〜

 日本の一般社会は遅刻に関して非常に厳しい。しかし夜の世界は「すみません、次からは気をつけます」だけでは済まない現実がある。というのもキャバクラの場合、女性がいなければ営業に支障が出てしまうため、遅刻、欠勤は罰金をとっている所が多いのだ。理恵子(仮名・25歳)もまた現役時代、店の決めた罰金システムによって苦しんだ1人だった。

 「私は昔から体調を崩しやすく、激しい頭痛や眩暈で寝込んでしまうことがあるんです」

 そう語る理恵子は中学生の時から閃輝暗点という病気に悩まされていた。発作自体は月に1回ほどだが、頭痛や嘔吐を引き起こすだけでなく、視界の一部までが閉ざされるため、その日は何も手につかず寝込んでしまうという。彼女は欠勤した翌日、病院の診断書を持ち込んだが罰金というペナルティは覆らなかった。それは病気を信じてもらえなかったからではない。その店では、どんな事情であろうとシフトに穴を開けた時点で罰金の支払いが命じられる。たとえそれがインフルエンザや家族の不幸であってもだ。

 「店長にもしっかりと事情は話したのですが“それは大変だね。でも規則は規則だから”の一点張りで、どうしようもありませんでした」

 理恵子の店は遅刻が5千円、欠勤が1万円だった。例えば4〜5時間働いて日給約1万円だとして、もし病気で欠勤してしまったら、前日の稼ぎはほぼなしになってしまうのである。他にも罰金を取られた経験に関して彼女は語る。

 「働き始めた時に、週5で入りたいと店側には告げていました。でも他の予定でどうしても出勤できず、あらかじめこの週は4回だけしかは入れないと報告していても、その月の給与からはその分、罰金として引かれていました」

 このようにキャバクラにおいて罰金システムは常識となっているが、法律に照らせば違法という場合も多い。しかし働くキャバ嬢達はそのルールが当たり前だと思い支払う。遅刻や休み癖の多いキャバ嬢などは月給がマイナスになるという笑えない状態の子も珍しくはないという。

 理恵子は納得のいかない罰金システムや、病気のこともあり、キャバクラを辞めた。秋からは彼女の実家がある名古屋に戻り、両親の経営する喫茶店の手伝いをしながら生活していくという。

(文・佐々木栄蔵)

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