社長の名前は延藤直紀。元々はプロのキックボクサーで、現役引退後に会社を立ち上げたという特異な経歴の持ち主である。
CCPの工房兼オフィスは、倉庫として使用されていた建物を5年前から使っている。入り口には等身大のキン肉マンが鎮座し、訪れる人を出迎える。元は倉庫だっただけに、天井が高く開放感がある。出荷を待つキン肉マンなどのフィギュアの間を抜けていくと、奥まった場所に事務所があり、パソコンの前に社長の延藤が座っていた。元キックボクサーということもあり、体型はすらっとして、贅肉がない。
事務所のショーケースの中には、ウルトラマン、レッドキング、バルタン星人や、キン肉マン、ロビンマスク、バッファローマンやウォーズマンなどの子供時代に見慣れたヒーローたちが、所狭しと並べられていた。それらのヒーローを目にしていると、少年時代テレビにかじりついて見た懐かしい記憶が蘇ってくる。
「この中にあるマンモスマンは本物のマンモスの牙を仕入れてきて、浅草の職人さんに削ってもらったものを使っています。ロビンマスクのマスクはプラチナです。肉体に関しても、それぞれの超人の特徴を活かして造っているんです。たとえばロビンマスクは肩の周りの三角筋を大きくして、彼の得意技であるタワーブリッジがかけられる肉体に仕上げています」
延藤がそれぞれのフィギュアに込められているこだわりを語ってくれた。彼が造り出すフィギュアは、“超人たちがこの世界に実在したら”というコンセプトのもと、筋肉や体脂肪率まで考え、リアリティーを追求して造られているのだ。
それらこだわりのフィギュアの値段は、だいたい1〜2万円台。プラチナが使われているロビンマスクは25万円で売り出され、プレミアがつき80万円にまで跳ね上がった。
フィギュアの細部に至るまでのこだわりは、どの筋肉を鍛えれば、どのような体つきになるのか、キックボクサーだった時代に己の体を鍛え上げた経験が活かされている。
延藤がフィギュア製作に繋がるヒーローに興味を持ったのは少年時代に遡る。ウルトラマンなどのヒーローに憧れる一方で、小学校時代にイジメに遭ったことも、格闘技をはじめるきっかけとなった。
「強くなろうと空手をはじめたんです。空手をはじめたら周りの自分を見る目が変わり、イジメもなくなりましたし、自信にもなりました。中学、高校と空手を続け、まだまだ続けたいと思ったんで、自衛隊に入ったんです。いろいろ調べていくと、お金ももらえて、思う存分空手ができるのは、自衛隊だったんです」
そんな思いから空手に打ち込んだ延藤だったが、とある大会で誤審によって負けてしまったことから、自衛隊を離れる決意をした。
「そのときに思ったんです。どうせやるならプロになって、誤審とか関係なく、倒すか倒されるか、はっきりさせればいいって」