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ミニコミ誌と同人誌、どう違うの? その2

 ミニコミ誌と同人誌は何が違うのかという質問を知人から受け、その回答を記事に書いた。前回の記事では、「ミニコミ」「同人」という言葉に焦点を合わせ、歴史を振り返った。記事概要を記すと、「ミニコミ」という言葉は社会運動の中から生まれ、「同人」は志を同じくする仲間を意味するという内容になった。その記事を読んだ知人から、昔のことはわかったので今どうなっているのかを知りたい、と続けて質問があった。

 今どうなのか。結論からいってしまうと、現在は、人々の価値観が多様化し興味が細分化されているので、「ミニコミ誌とは何か」「同人誌とはどういった雑誌なのか」という定義を追求するよりは、それぞれの価値観は何か、その人やグループの興味がどこへ向いているのかを、そのつど確認したほうがてっとり早い。“ミニコミのイベント”でも、ミニ(小規模な)コミ(コミック・まんが)のイベントだったり、“同人誌”の中に、芥川龍之介や中原中也など著作権保護期間が過ぎた著名な作家の作品が収録されていることもある。

 また、「ミニコミ誌」や「同人誌」よりもより細分化された現象や事象を差し示す言葉でも、複数の意味や概念が内包されるようになっている。ミニコミ誌の中の一つとして認識されてきた「タウン誌」という言葉を例に挙げれば、現在では、複数の意味で使われている。ある炭鉱の街やある川の流域で起きた出来事や情報を広く社会に発信する雑誌も「タウン誌」であり、特定の地域に住む人々やその場所へ興味がある人々へ向けられた雑誌も「タウン誌」と呼ばれる。東京都にある板橋区高島平など人口が急激に増えた地域では、新聞に、その街を取り上げた「タウン誌」が折り込まれ配達されることもある。大手新聞には全国のニュースと都民版のニュースが掲載され、それに加えて、その地域のニュースが載っている「タウン誌」が手元に届く。

 問題提起や主張、情報発信としての「タウン誌」があるいっぽうで、表現や記録としての「タウン誌」もある。日本は雨の国であり、古来より、移りゆく気候や季節は詩歌や文学の主要な題材となっている。自然だけではなく、人は、変わりゆくものや、なくなりつつあるものを記録しておきたいという欲求を持つ。子どもの成長記録や記念写真、紀行文や記録文学をはじめ、一昔前であれば東京タワー、現在なら東京スカイツリーの、日々変わりゆく建設風景を、絵画にしたり、写真に撮る人は多い。市井の生活者が自らの視点で街や人を見て、発見したものを表現する「タウン誌」もある。

 結論を繰り返すと、ミニコミ誌や同人誌という言葉に出会ったら、何をもって「ミニコミ誌」という言葉が使われているのかや、「同人誌」という言葉が何を指しているのかを、その都度、何らかの方法で確認しておいたほうが、適切な、あるいは、円滑なコミュニケーションができるだろう。相手に直接「ミニコミ誌って何ですか?」「同人誌ってどういった雑誌のことですか?」と聞くかどうかはさておくとしても。(竹内みちまろ)

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