「胃痛は本来、胃液が多量に出てしまった時や、胃の粘膜が薄くなってしまい、粘膜の胃炎や胃の筋肉が痙攣することによって発生するものなのです。一般的には、飲み過ぎや食べ過ぎた後の不快感、緊張などでストレスが溜まると痛みを感じることがあります。特に空腹時や夜間に起こりやすいのですが、元々胃が弱く、消化力が弱い人は起きやすい疾患といえます」
こう説明するのは、日本消化器学会専門医でもあるみつぎ内科医院長の三ツ木医師である。
「胃痛は原因を見つけることが大切なんです。ですから自己判断で、むやみに市販薬などを服用しないでほしい。症状が改善しないことがあるし、副作用が出る心配もあるので、胃痛がある時は胃腸科、神経科で検査して貰うことが大切です」(同)
ところで、安倍晋三新首相で一躍脚光を浴びた感のある「機能性胃腸症」。あまり聞いたことのない病名だけに、どんな病なのか疑問に思われた人も多いはず。これ(機能性胃腸障害とも言う)は、たとえば胃潰瘍や胃炎といったはっきりと目に見える病気がない(医学的には“器質的疾患がない”)のに、胃もたれ、吐き気、胸やけ、下痢、おう吐などの症状が出る病気といわれている。
専門家によれば「1990年ごろから米国の消化器学会で提唱されるようになった比較的新しい概念」だという。しかし、「潰瘍のない胃腸障害」とも呼ばれていた時代もあり、「神経性胃炎」「胃弱」「慢性胃炎」などといわれていたこともある。中には「機能性なんとかは、“気のせい”、気にしないこと」と言う医師もいるほどだ。
今やストレス社会といわれ、胃へのダメージを受ける人は少なくない。ほとんどの場合、胃酸が過剰に分泌されるだけでなく、胃酸から胃の粘膜を守る胃粘液量が少なくなる。このため粘膜上皮が傷つきやすくなり炎症が起こる。つまり胃炎だ。これは、ストレスによる自律神経の乱れが要因とされている。
胃のムカムカ、軽い胃痛などは、しばらくすると症状は治まることもあるが、ストレス原因が解消されない限り、何度も同じサイクルを繰り返す。
「経験的に、胃炎は何度も繰り返していると知覚神経が鈍くなってしまい、痛みも感じなくなるし、痛みなどの不調にも慣れてしまう。本人が症状をあまり重要視しなくなり、胃や十二指腸の潰瘍に悪化させてしまうこともある」(前出の加藤医師)
いずれにしても、胃の不調を感じたなら自己判断しないで、専門医の診断を必ず受けるべきである。