だが、この街には依然として深〜い闇が存在する。“ぼったくり”の被害が絶えないのだ。
警視庁によると、歌舞伎町でのぼったくりに関する通報は今年1〜3月で約700件もあったという。防犯カメラがそこかしこにあり「客引きは全て違法です!」と繰り返しアナウンスが轟いているにもかかわらず、それでもキャッチに引っ掛かり、「3000円ぽっきり」「1時間2000円」などのフレーズにうなずいて入店した揚げ句に「1人30万円です」とコワモテの店員に請求され、泣き寝入りしている人が後を絶たないのだ。歌舞伎町には、いまだ1000人ものキャッチがいるといわれている。
今年に入り、キャバクラ店『ALTANA』従業員ら2人を恐喝容疑で逮捕、同じく『grandoir』従業員ら4人を強盗の疑いで逮捕、同じく『LUMINE』従業員ら4人を暴行容疑で逮捕…。警視庁新宿署は大忙しだ。
「横暴な料金請求です。『ALTANA』では、キャッチが客にした話では70分4000円だったところ、1時間飲食しただけで62万円を請求したようです。警察は以前からこの店をマークしており、複数の被害者から事情を聴いていました」(全国紙社会部記者)
1999年、新聞に《梅酒1杯15万円》の見出しで報道されたぼったくり事件で逮捕された“元ぼったくりの帝王”こと作家の影野臣直氏は、『ぼったくり防止条例』ができる基点となったことで知られ、歌舞伎町のぼったくり事情に精通している。
「今のぼったくり店は“にわか店”です。他の場所からブラリとやってきて1、2カ月で稼いではまた他の盛り場に移るということをやっている。そもそも歌舞伎町には、ぼったくり条例ができたといっても、昔から連綿とぼったくりはあったわけです。この条例は『明確な料金の義務化』と『乱暴な言論や暴力による料金不当取り立ての禁止』をうたっていますが、値段表なんて例えば店内を赤い照明にして赤い文字で書けば読めませんし、料金取り立ても外部と連絡が取れるようにしておけば、何回もやんわりと『遊んだ分は払って下さい』と丁重に請求すれば条例には触れない。キャッチが言っていた値段とは違うという主張も、店としては『そんなキャッチは知らない』と言い張ればいいだけです。抜け道はいくらでもあるんですよ。客は、払わないと無銭飲食になるわけです。そもそも“サービス業”で登録すると、飲食物はいくら値段を付けてもOKなのです。警察を呼んでも『当事者同士で話せ』と言われるだけです」