きな臭い話はそれだけではない。五輪種目候補の上位に挙げられている競技にも、不可解な動きがある。それが、日本の武道とも言うべき「空手」だ。
東京五輪の追加種目選定で大会組織委員会は、野球・ソフトボールと空手、ローラースポーツ(スケートボード)、サーフィン、スポーツクライミングの5候補を国際オリンピック委員会(IOC)に提案する方針を固めてた。来年8月にリオデジャネイロ(ブラジル)で開催されるIOC総会を経て、正式に決定される見込みだ。
空手界にも動きがあり、9月25日、国際空手道連盟極真会館(松井章圭館長)が都内・代官山道場で記者会見を行った。フルコンタクト空手6団体が友好関係を結び、全日本空手道連盟(全空連)が進める空手(寸止めルール)の五輪公式競技化活動を支持すると表明したのだ。
五輪種目になるには、1競技につき1競技団体という規定がある。しかし、空手には直接打撃を当てる“フルコンタクト”と、寸止めで直接当てない“ノンコンタクト”が存在する。
フルコンタクト空手は、極真会館を創設した大山倍達氏によって世界各国に広まった。現在は多くの流派に分かれているが、一般的に空手というと、フルコンタクトと考えている人も多いだろう。対するノンコンタクトは伝統派空手とも称され、松濤館、糸東流、剛柔流、和道流などが代表的な流派である。
伝統派が中心となって結成された全空連は、空手が五輪種目に採用されるよう長年にわたり活動してきた。一方、フルコンタクト空手では各流派の大同団結を図るため、新極真会が全日本フルコンタクト空手道連盟(JFKO)を立ち上げ、五輪種目化を目指してきた。
ただし、そこには両派の相いれない問題があった。1980年代にも五輪競技化に向け、協調路線を進もうとしたが、大山倍達氏はフルコンタクトを譲らず、また、全空連もフルコンタクトを受け入れず、現在にまで至った経緯があった。ところが、極真会館(松井派)は長年の方針を変え、全空連と友好団体を結成したのだ。
いったい空手界に何が起こっているのか、その深刻な内情を『週刊実話』独占で、新極真会・緑健児代表が語ってくれた。
「残念なことに今回は、フルコンタクト空手が五輪種目に組み込まれるか微妙な状態です。フルコンタクト空手は、大山総裁が創り上げ、世界に広げてきた空手です。総裁亡きあと、さまざまな流派ができましたが、元は一つでした。そこで大同団結していこうとJFKOを立ち上げました。
我々は5年前から五輪種目化を目指し、“二つのルール”で実現させるため、短期間で実に103万もの署名を集めました。衆議院議員の中谷元議員にもご尽力いただき、それをもって我々は全空連、そして東京五輪の大会組織委員会に要望を伝えてきたのです。
しかし、全空連の門は固く閉ざされていました。空手で五輪に参加したい人たちに門戸を広げるというオープンマインドな姿勢のようですが、そこには条件があり“私たちのルールで参加するのなら”と、かたくなでした。当然、フルコンタクトでは参加できないルールです。
もちろん、全空連は30年も前から五輪競技に向けて活動されてきました。それを認めた上で、二つのルールを訴えてきたのですが残念です。もう少し空手界全体を見渡してほしかったのですが、我々は五輪に関して別の可能性を追求するしかありません」