中村被告は殺意を否認していたが、森岡安広裁判長は殺意を認定した上で「子供らは頼るべき母親に命を奪われた。犯行は非常に残酷で、2児の飢えと渇きは想像を絶し、無残だ」と述べ、懲役30年(求刑・無期懲役)を言い渡した1審・大阪地裁の裁判員裁判判決を支持、被告側の控訴を棄却した。
控訴審判決によると、早苗被告は10年6月9日、自宅の居間の扉に粘着テープを貼り、玄関を施錠して、長女の桜子ちゃんと長男の楓(かえで)ちゃんを閉じこめたまま外出し、約50日間、友人らと遊び回って帰宅せず、2児を餓死させた。
早苗被告の育児放棄(ネグレクト)に、「子供が死んでもいい」という未必の殺意を認められるかどうかが争点だった。
判決理由で森岡裁判長は、被告がごみまみれの部屋で衰弱した2人を目の当たりにしながら施錠、外出しており、「生命が危険な状況で、放置すれば死亡すると認識できた」とし、一審同様、未必の殺意があったと認定。1審判決の量刑は相当と判断した。
早苗被告は、面識があった夫婦(中村さん)と今年3月から面会、手紙のやりとりを重ね、10月に養子縁組し改姓した。養父母によると、「彼女は刑務所に行く覚悟はしている」と話している。
2児はむごい形で、尊い命を失った。早苗被告はまだ25歳。刑に服しても、50代前半には出所して、新たな人生を送ることができる。それを思えば、懲役30年の刑は決して重いとは思えない。
(蔵元英二)