「今までも、店の営業を終えた後に出待ちされていたり、客が書いた手紙などが自宅のポストたくさん入れられていたことはあったんです。でもオートロックのマンションに侵入されたことはなかったし、危険な目にあったことはありませんでした」
それだけに真琴は、油断していたのかもしれない。ストーカーから狙われているとも知らず、彼女はゴミを捨てる時も個人情報に関する書類や、下着も、切り刻んだりせず、そのまま無造作にゴミ袋に入れていたという。そんなある日、客からある驚くべき事実を聞かされる。
「お客さんから聞いて知ったんですけど、キャバクラのホームページに載ってる写真と私の捨てたはずの下着が、ネット掲示板に並んで載せられていたんです」
その掲示板は、他人が捨てたゴミを写真に撮ってアップするという物好きな人間が集まるアングラサイトだった。真琴のマンションのゴミステーションは外にあり、誰でも簡単に侵入することができたため、真琴のことを知る者がゴミを漁り写真をアップしたのだ。自分が身に付けた衣類だけでなく、身元まで特定されて晒されていたことに真琴は激しいショックを受ける。
「本当に気持ちが悪かったですね。お客さんの仕業かもしれないですし、ゴミを捨てるのが怖くなりました。その後は、わざわざ隣の地域にまで捨てに行ったりしてましたし」
自分のゴミが漁られるという恐怖体験を忘れることができなかった真琴は夜の世界を捨てることを決意する。
「とにかく自分のゴミを漁った人が普通にお客としてくるかもしれないと思うと、もう働くことは無理でしたね。店を変えればいいのかもしれないけど、そんな気力もなく…」
現在、真琴はキャバクラを辞め、引越しを済ませた後、男性とほとんど接することのないアパレル系のショップ店員として働いているという。
(文・佐々木栄蔵)