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防災対策に金をかけろ 不毛な地震予知に血税をドブに捨てる“課税夫”のノダ(2)

 地震計だけではない。津波観測にしても実にお寒い限りだ。
 気象庁は、地震発生から2分後に地震速報、3分後に津波警報を発表することになっている。津波発生から沿岸に到達するまでの時間とは、「津波の発生源の深さと、沿岸までの距離がわかれば明らかになります」(前出・気象庁担当者)とのこと。そのため津波の観測地点は、沖合遠方にあることが望ましい。
 しかし現在は、ほとんどの津波観測機器は沿岸からわずか20km足らずのところが設置場所だという。「それより遠くなるとGPSの電波が届かず、地上との交信もできないから」(同)との理由だ。
 つまり、今回のような130kmもの沖合が震源地となった大地震の場合、たった3分後に、沿岸に達したときの津波の高さを正確に伝えるのは、ほぼ不可能ということだ。
 遠方の沖合設置が困難なことに加え、東日本大震災では岩手、宮城、福島のほか秋田、青森など、各県19地点に設置された肝心の津波観測受信機が、破損あるいは流出してしまった。そのため交信不能に陥り、データが遮断されるというモロさも見せつけた。

 このように日本の地震に対する調査研究は、陸地や海域だけでなく、地下水や地磁、地熱などの分野でも盛んであり、あらゆる角度からなされているにもかかわらず、それでも“3・11”を予測することはできなかったのである。
 地震予知連絡会の島崎邦彦会長は、地震発生後の会見で「想定外でした」と発言した。おそらく念頭には、東北地方で度々発生した過去の大規模地震によりエネルギーが放出され、当面は起こり得ないという素人と同じような思い込みがあったのだろう。
 そのことを示すように、文部科学省が2010年1月に作成した「全国地震動予測地図」では、30年以内に三陸沖でM8.0クラスの地震が発生する確率は10%程度となっており、同会の担当者も「過去に発生した大規模地震によって、プレートの沈み込みはかなり解消されていたと見ていました。東日本大震災の要因になった日本海溝のプレート境界では、強い固着があるとは考えられていなかった。むしろ日本海溝沿いは固着が強くない領域と見るのが、専門家の間では半ば常識になっていました」と語っている。

 今回の地震調査研究関係予算案のうち、約188億円、前年比で増えた分のおよそ60%を占めているのが、文部科学省管轄の防災科学技術研究所が担当する「日本海溝海底地震津波観測網の整備」という施策。中身は「東海、東南海沖と同様、日本海溝沿いにもケーブル式観測網を整備し、高精度な津波即時予測システムの開発を行う」となっている。
 津波観測の脆弱ぶりの反省とはいえ、あんなにも無慈悲な惨状を経験した今となっては、大きな地震が起これば、誰もがシステムなどに頼ることなく一目散に高台に逃げるだろう。
 結局このような一般的な感覚と、専門家の研究に基づく「予知」は、大差がないのかもしれない。
 地震についても、「4年以内に70%」という予測を示されることと、3・11の経験から学んだ防災への心構えは同じだ。つまり、いつでも“その時”に備えておくべきだし、政府は「防災対策」にこそ金をかけるべきなのである。

 東日本大震災の後、多くの地球物理学者が「地震予知は不可能」との立場をあらためて明確にした。東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学)は、英科学誌『ネイチャー』に論文を掲載し、その中で「常に日本全土が地震の危険にさらされており、特定の地域リスクを評価できない。日本政府は地震を予知できないことを国民に素直に伝えるべき」と提言した。
 日本の地震研究は、先に述べたように多方面にわたっているため、所轄省庁も国土交通省、文部科学省、経済産業省など多岐に及んでいる。しかし、研究分野としては広いわけでもなく大同小異だ。
 たとえば津波研究については、気象研究所もタッチしていれば独法の海洋研究開発機構も携わっている。活断層にしても、産業技術総合研究所や国土地理院がそれぞれに行っている。
 これらを仕分けして一本化すれば、経費削減はもちろん事業の円滑化にもなるはずだが、それをしない。なぜなら役人は省益に群がり、研究者は研究者で“地震ムラ”に群がっているからだ。
 「お粗末な人災」と言われる理由がそこにある。

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