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ローティーンの整形は許せるか

 はじめまして、朱里と申します。1991年3月、太平洋を越えて、湾岸戦争の起こった年に初めて到着したアメリカ大陸のワシントンDC、ダレス国際空港はちょうどその前年に大ヒットした映画『ダイハード2』の舞台になった場所でした。

 DCにはギター1本を買いに来ただけの筈だったのですが、ふと、ロスアンゼルスに居る学生時代の友人に電話したくなりました。せっかくアメリカに来たのだし、物のついでと簡単に考えたのです。その当時東海岸と西海岸がどれくらい離れているかなんて知る由もなかった私は無謀にも「遊びに行ってもいいか」と尋ねると、その友人は即答で快諾してくれました。ロスアンゼルスはワシントンDCから飛行時間が6時間かかっても来た甲斐がありました。LAというと、先入観ではダウンタウンなどビルが立ち並ぶ猥雑な都会を想像しがちですが、実際は広域に渡り年代物の魅力的な建築物が延々と続く美しい町並みにすっかり魅了されました。
 ロスアンゼルスの友人宅で2週間の滞在後、私は東京に戻るとすぐに赤坂のアメリカ大使館までビザの申請に行きました。今のような厳戒態勢でない当時の大使館で即日Bビザを発行してもらい、翌々日には再びロスアンゼルスに旅立ちました。あれから南カリフォルニアに移り住んで今年がちょうど20年目です。

 昨年2009年度の税務申告を今年は早めに終えようと思い、いつもお願いをしているCPA(会計士)まで昨年の関係書類などを持って出かけました。CPAのヤンさんはソウル生まれ、私より6年早く大学留学でアメリカに来て、その後永住権を取得したそうです。ヤンさんは大学時代から通い始めたトーランス市にある教会では現在委員会の役員を務めるほどの大変敬虔なクリスチャンです。またヤンさんは2人の娘さんの父親で、長女が高校の2年生、次女が小学校5年生です。
 スンドゥブチゲの昼食を二人で食べながら仕事の話を一通り終えると、ヤンさんが、「朱里さん、これをどう思いますか?」と実に興味の話を始めました。「次女の同級生の話なのですが、夏休みが終わって学校が始まるとその子の顔が少し変わっていたそうなんです」、私が「まさか、整形手術ですか?」と冗談で尋ねると、ヤンさんは少しウンザリした様子で「考えられますか?小学生の女の子が鼻筋を高く、目を大きく見せる手術をしたのですよ」と真剣に答えました。ヤンさんは続けて「親がさせたのか、それとも本人の意思なのか、いずれにしてもこれは由由しい問題だと思いませんか?」と少し怒っている様子でした。

 韓国はベネズエラやブラジルと並んで美容整形に関してたいへん熱意を持っているお国柄なのは周知の事実です。そして当然、出来ればいつまでも美男美女でありたい意識は、大昔から見せかけを重視するハリウッドに象徴された街ロスアンゼルスでも大いにあります。それにしても小学生が怪我でもないのに、夏休みのその殆どの時間を顔に包帯をグルグル巻きにして過ごしたことを想像しただけで気分が暗くなりました。でもその子や親もいったいどのような心持ちで手術の決心したのでしょうか?
 私はその夜に東京に住んでいる弟と電話で話す機会があり、ついでに例の小学生の美容整形の話をしてみました。私の弟は輸入自動車に関わる仕事をしていて、お客さんの中には美容整形の医師もいるそうです。すると弟は別に驚く様子もなく、日本でも昨今は少なからずの小学生や中学生がプチ整形といわれるものを含めて美容整形をしている話を聞いていることを教えてくれました。子供が美容整形をする理由は諸々あると思いますが、一番多いのが「自分が連れて歩く子は出来れば可愛い顔がいい」という親の都合らしいのです。またそれらの親たちは子供の美容整形について “ホクロの除去”や“歯の矯正”と同じことだ、と異口同音に主張しているとのことでした。結局親の歪んだ美意識のおかげで子供が犠牲になっていることが多いのですね。

 ヤンさんの次女が通っている公立小学校があるトーランス市は昔から日系の会社が数多くあり、多くの日系アメリカ人が住み、日本から来た駐在員の子供たちの多くが通う学校のある地区でもあります。私立校の方が教育レベルは遥かに高いアメリカに於いて、全国的に見てもこの地区の小中高校とすべての公立校はレベルが高く、また教師たちもたいへん優れています。そしてこの広大なロスアンゼルス郡の中でも比較的保守的な地域です。それ故に時々監視されているような息苦しささえも感じますが。さて後日談ですが、あまり他人の行動に干渉しないアメリカに於いてもさすがに美容整形をしてしまった件の女の子はイジメにあって、私立校への転校を余儀なくされたそうです。顔を傷付けてしまったことより、きっと同級生に疎外されたという心の問題の方が彼女にとっては今後大きなトラウマになるのでしょうか。

(川村朱里 レドンドビーチ市在住 ハウスウエアデザイナー)

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