その後はさらに低迷。一部では早熟説もささやかれ始めたが、鳴尾記念(8着)で騎乗した武豊騎手の進言により転機が訪れた。「この馬は向正面が長いコースは合わない。コーナーが多い方がいい」
そのアドバイスを受け、夏季休暇を返上して臨んだ小倉記念は、いつも通りの後方待機策だったが、コーナーごとに減速する分、いつも以上にタメが利いた。3角でゴーサインが出されると、一気に先行集団を射程に捕らえ、直線は余力たっぷりに抜け出して3馬身差V。続く朝日CCも貫録を見せつけて快勝し、完全復活を印象づけた。
そして、気性的に合わない東京の天皇賞・秋(10着)を経て挑んだ有馬記念。7番人気と評価はイマイチだったが、それに反発するかのように0秒4差4着に力走。し烈な2着争いに加わったゴール前の脚色は際立っていた。
「コーナーが多いのが良かったのもあるし、やっぱり右回りの方がいいんだろうね。直線ゴチャついたのは誤算だったが、この馬の力のあるところは見せられた」。池江寿調教師は満足げに振り返った。
前走後は日経新春杯と両にらみで調整を進めてきたが、「コース適性、ローテーションを考えてAJC杯へ」と師。激走した有馬記念から間隔が詰まっていることについても、「体質的にも精神的にも大人になってきたから、使った後も体が減らなくなったし、中4週でも大丈夫。普段通りの調整ができているよ」。開業5年目にして昨年、早くもリーディングを獲った新進気鋭のトレーナーは状態面に何の不安もないことを強調した。
ここは父ステイゴールドが2000年に2着した舞台。国際GI・香港ヴァーズを制した偉大な父を超えるため、そして2つ目のGIタイトルへ弾みをつけるためにも取りこぼしは許されない。