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プロ野球トライアウト密着取材 戦力外通告から這い上がる選手たち(2)

 「平常心」を口にした投手もいた。江村将也(28=前ヤクルト)は“トライアウトの宿命”で急造バッテリーとなるが、サインに首を振らなかったという。
 「首を振れば、その分、ピッチングのリズムも悪くなりますから。シーズン中も基本的には首は振りません。こちらの意図が伝われば」

 打者3人と対戦し、三振も奪ってみせた。江村は「狙った」と言い、チームの優勝後に戦力外通告を受けた悔しさをぶつけたようだ。
 江村は'14年オフに左肘にメスを入れている。「ネズミを取る」といった軽度のもので、自身も「これから」と思っていただけに、再起に懸ける思いも強かった。

 プロ野球の球団も会社組織である。上司(監督、コーチ)が代われば、戦略も変わる。戦略が変われば、そこに起用される選手も前政権と全く同じというわけにはいかなくなる。また、東京ヤクルトはセ・リーグの覇者となり、当然、来季は連覇を目指した補強をしなければならない。“故障者”を待ってはくれないのだ。
 組織から弾き出された選手は江村だけではないだろう。解雇を通告された選手には家族もいれば、住宅ローンなどの返済も残っていただろう。「サラリーマンよりも高い年俸をもらい、華やかな世界にもいたのだから…」と、やっかむファンもいるかもしれないが、果たして、そうだろうか。

 彼らは人生の大半を野球に費やし、そのために大きな怪我を負ったこともある。完治しないまま実戦に駆り出され、その影響で怪我を慢性化させてしまった選手もいる。慢性化した怪我を理由に解雇を通告されたとすれば、「一体何のために、自分はチームに尽くしてきたんだ!?」と、恨み言の一つも言いたくなるだろう。
 正当な評価をされず、悶々とした思いでベンチを温めた日もあったはずだ。

 西村憲(28=元阪神)は'12年オフに右肘関節変形手術を受け、'14年オフに戦力外となった。しかし、その後BCリーグ・石川ミリオンスターズと契約し、復調のきっかけを掴んだ。今季、石川で26試合に登板し、防御率0.00と突出した成績を残してみせた。
 「手術は初めてで、回復に時間が掛かってしまいました。不安も痛みもないし、もっとスピードが出ると思います。力加減やバランス感覚も、もっと良くなると実感しています」

 西村は自身が登板しない日もブルペンに入り、投げ込みを続けてきた。試合では「ゼロに抑える」と常に自身に課して挑んできた。
 独立リーグが再起に繋がるステージとなったのだ。

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