また、過去に巨大津波を引き起こした南海トラフ(東南海、南海)を震源とする地震の前には、内陸型の大地震が発生している。少なからぬ研究者が「今回の地震を一過性のものと考えるべきではない」と警戒を呼び掛ける中、武蔵野学院大特任教授で地震学者の島村英紀氏もこう話す。
「南海トラフの巨大地震が近づきつつあることは間違いありません。今回の地震がその引き金になるかどうかは、今の地震学では分からない。ただし、海溝型地震の前に内陸部の地震が頻発して、その後、巨大な海溝型地震が発生するというパターンはあるのです」
実際に、1944年の東南海地震、'46年の南海地震の前には、それぞれ前年に鳥取地震、三河地震が起き、1000〜3000人の犠牲者が出ている。さらに長い期間で見れば、1891年にはM8.0で日本史上最大の内陸地震とされる濃尾地震が発生している。
「過去の事例を見ても分かるように『南海トラフ地震の前には、その前兆現象のごとく内陸地震が活発化している』と指摘する専門家は多いのです。今回の地震が“南海トラフの西端”のプレッシャーにより発生したと考えれば、南海トラフ全域へ影響を及ぼす可能性も考えなければなりません」(前出・サイエンスライター)
また、前出の木村氏が主張する巨大地震の予測震源地には、伊豆・小笠原諸島がある。その前兆とも言える地震が、4月1日に三重県南東沖を震源として起きたM6.1だ。
「この地震は、実は伊豆・小笠原諸島の地震・火山活動と深く関係しています。以前から指摘しているように、フィリピン海プレートの東側で強まっている太平洋プレートからの圧力の影響が、フィリピン海プレートと大陸側のプレートの境界面にまで及んできたということ。そのため今後、この海域を震源とする巨大地震には十分に警戒すべきです」(前出・木村氏)
伊豆・小笠原諸島近辺の火山について言えば、2013年から続いてきた西之島の活動はかなり落ち着いてきた。しかし一方で、伊豆大島の三原山では30年ぶりに噴火活動が再開する可能性があるという。
木村氏によれば、「P1」「P2」「P3」と呼ぶ火山噴火の段階を経て、近辺で大地震が発生するが、三原山は現在、「P3」の段階なのだという。
「『P3』は群発地震が発生した後で、小規模の噴火が起きる段階。その後に大地震が発生します。三原山は1912年に大噴火を起こし、その後何度か噴火。'22年にも噴火を起こし翌年に関東大震災があったのです。'12年の大噴火は、11年後に起きる巨大地震の予兆とも言える」(同)
1986年の三原山の大噴火は、「300年に一度」と言われるほど大規模なものだった。さらに短期的には30年周期で噴火を繰り返しており、今年はその30年目に当たる。
「ひょっとすると溶岩流出により全島避難となるかもしれませんが、おそらく噴火の規模はそう大きくありません。しかし、ほどなくして周辺で巨大地震が発生するでしょう」(同)
それが伊豆・小笠原諸島を震源として起こるという超巨大地震なのだ。