「道中の手応えは、むしろ怪しかった」。サクラオリオンの鞍上・秋山騎手が振り返った“怪勝”の背景には、他馬とは一線を画す馬場適性があった。
「巴賞の内容が良かったので今回も期待はしていたが、返し馬の雰囲気はもうひとつ。道中も手応えが悪かったので、内に進路を取って我慢していた」
この秋山の言葉通り、オリオンのポジションは中団からやや後方。大外枠からのスタートも、うまく内ラチ沿いに馬をもぐり込ませ、いわゆる“死んだフリ”の追走だった。それでも、鞍上は最後まで疑心暗鬼だったという。
「直線では前がポッカリ開いてくれたが、それでも巴賞と同じく手前をかえなくて…。まさか、それで勝つんだからね。勝因は馬場適性…このひと言に尽きるんじゃないかな」
レースの上がり3F35秒5が示すように、展開はむしろ前残り。その流れを手前をかえずして差し切るのだから、言葉を並べて勝因を説明できないのも当然か。
昨年の中京記念に続く2度目のタイトル制覇に、管理する池江郎調教師の表情にも喜びと驚きが入り混じる。
「中京記念の時はハマったと思ったが、今回もこんなにうまくいくとはね。若いころに故障があって無理をしなかったのが、この活躍につながっているのかな」
今後、目指すのは、むろんGII・札幌記念(札幌芝2000メートル、8月23日)出走によるサマー2000シリーズ制覇だ。これまで函館記念と札幌記念の連動率は決して高くないが、今年はまったく同じ舞台で行われる。たとえブエナビスタ、マツリダゴッホ、ディープスカイといったGIホースが相手でも、「夏は格より勢い」の格言と併せ、軽くは扱えない存在となりそうだ。