日本に限らず、世界のほとんどの国で妊娠中のアルコールの摂取は控えるように言われるだろう。しかしドイツでは、妊娠中でもビールを飲むことを勧められるのだ。特に、つわりがひどいときは、「原料の麦には栄養があるから」という理由で医師や助産師が勧める場合が多い。多くの場合、ノンアルコールビールだが、ドイツの大手メーカーのノンアルコールビールは0.05%ほどのアルコールが含まれていてゼロではない。
「妊娠中、助産師さんからビールを勧められてびっくりしました。しかし、少々アルコールが含まれているものの、ノンアルコールビールを飲んでいる妊婦さんは多かったですね。中には、『多少なら大丈夫』とアルコール入りのものを医師に勧められ、飲んでいた妊婦さんもいましたよ。ビールを飲むと、『体調が良くなる』と言っていました」(ドイツ在住の妊婦)
妊娠中の対応でいうと、診察室でも日本とは異なる部分があるようだ。
日本の場合、診察台はカーテンで区切られていて、医師と妊婦が顔を合わせないよう配慮されているが、ドイツにはカーテンなどはなく、妊婦と医師がダイレクトに顔を合わせるようになっている。夫が付き添うことも多いが、夫も診察室に入り、診察台に乗っている妊婦の横に立ち、一緒に医師の診察を受けるのだ。
「すべてがオープンな空間なので、初めは気まずくて仕方がなかったです。しかも、診察室に入ると、『そこで下着を脱いで診察台に乗って』と言われ、洋服や下着を脱ぐ時も、医師と夫が見ている。なかなか慣れず、しばらくは医師の説明が全く頭に入ってきませんでした」(前出・同)
さらに、妊婦にとって大変な体重管理があまりない点もドイツの特徴だ。
日本では、標準体重の人が妊娠した場合、体重増加をトータルで7〜12キロにとどめるよう医師から言われることが多い。太りすぎるとトラブルが起きやすいため、医師は検診のたびに厳しく妊婦の体重管理をするのだ。しかしドイツでは、体重に関して一切言われることがないそうだ。
「ドイツでは、妊婦は太るほうがいいと思われる傾向にあり、医師から体重について言われることはほとんどありません。むしろ、私は1か月に1〜2キロと上手に体重を増加させていったのですが、もっと太るように言われました。同じ病院に通っていた出産間近の妊婦さんで、25キロ太った人もいましたよ。それでも、これまでに医師からの指導はなかったようです」(前出・同)
出産一つとっても、国が変わればその国のやり方があるようだ。日本とは異なる妊婦への接し方に、驚く点も多いだろう。