日常とは違う雰囲気に飲みこまれる感覚に漂いたい衝動に駆られ、本能のおもむくままにフラっと足を運んでみた。
店内が広くて、テーブルや椅子、照明の設備にしっかり投資をしているキャバクラは自然とテンションアップする。環境の影響は非常に大きいのである。これで自分のタイプのコが席に着いてくれたら、もっと嬉しくなると思い、ニヤケ顔になってしまう。
今回、席に着いたサヤコ(仮名・20歳)のルックスは、顔のパーツが小さく、足がスラッとしている。黒ずくめのファッションと金髪の対比が何とも海外セレブタレントのようなオシャレな雰囲気だ。声も年相応に甲高く、若々しさが溢れているが、目が据わっているというか、色々と深〜い経験をしていそうな感じだった。
私は、女性として、キャバ嬢としてではなく、人間的に面白そうなタイプがいると掘り下げて聞きたくなってしまう。どうせ数日後にはキレイさっぱりに忘れてしまうくせに変に興味を持つのは何故だろうか。
そんな素の好奇心を抑えて、私には果たさなければならない任務がある。男としてキャバ嬢をしっかり口説かねばならない。例え敗北が予想される劣勢の状態であったとしても、キャバクラという戦場ではヤルかヤラれるかだ。
トークの組み立てとしては、お互いのプロフィールを簡単に紹介して、途中でギアチェンジを行い、恋愛トークの車線へアクセルを全開にふかしまくる。サヤコが好きなタイプは「優しいタイプが好き」というが、どんなルックスの男性がタイプかまでは教えてはくれなかった。
よほど話が合わないタイプならともかく、連絡先を交換しようと思えば簡単に出来るが、そんな気持ちにはなれなかった。心がどこかで折れてしまい、何ともいえない虚無感に襲われたのだけは覚えてるが、理由はわからなかった。
女性の心以上に男性の心もデリケートなのだ。どんな相手にも口説く戦いを挑まねば勝利は永遠にやってはこない。キャバ戦記を刻むためには、さらなる精進が求められる。
帰ったあとにちょっぴり後悔した…やっぱり連絡先交換しとけば良かったな。
*写真は本文とは関係ありません
【写真提供】新宿レジェンド