「様々なことが起こりうるので、具体的なケースを設定してフリーハンドを失いたくない」というのが表向きの理由だが、本当の理由は、「米国がどんな要求をしてくるか分からないので、どんな要求にも対応できるようにしておきたい」ということだろう。米国に言われれば、いつでも自衛隊を後方支援に差し出しますというのが、本音なのだ。
その片鱗は、国会審議のなかで何度も見られた。例えば、7月30日の参院・平和安全委員会で社民党の福島瑞穂議員が、これまでの周辺事態法では外国の軍隊に弾薬の提供を禁じていた理由を質すと、中谷防衛大臣が、「現行法の制定時においては、米軍からのニーズがなかった」と回答したのだ。
また、中谷大臣は8月3日の参院平和安全委員会で、外国の軍隊に対して武器を提供することを今回の法案に入れなかった理由について聞かれて、「米側からのニーズはなかった」からだと述べている。
さらに、8月19日の参議院審議では、山本太郎議員が、「第三次アーミテージレポート」の通りに日本政府が政策を決めていると批判。アーミテージ米国元国務副長官が'12年夏に発表したレポートは、日本に対して、原発の再稼働、TPP推進、秘密保護法、武器輸出三原則の撤廃、そして集団的自衛権の行使容認を提言している。いまの自民党が行っている政策は、すべてアメリカの言いなりだと山本議員は主張したのだ。
安全保障関連法案に賛成する人は、「いまアメリカの軍事力の傘を失えば、日本の平和と安全は守れない」と考えているのだろう。しかし、国会で本当に議論しなければならなかったのは、それが本当に正しいのかという根本問題だ。
太平洋戦争の後も、米国は、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争など、大きな戦争を繰り返してきた。その米国への従属を強め米国の戦争を後方支援していくことが、本当に日本の平和と安全をもたらすのだろうか。もっと言えば、日米安全保障条約が、日本の平和を維持するために、いまだに最も効果的かつ効率的な方法なのかということをしっかり議論すべきなのだ。
もし日本が日米安全保障条約を破棄したら、一体何が起きるのか。残念ながら国会審議では、そうした議論は、一切行われなかった。
私は、戦後70年も経ったのだから、日本は、そろそろ独立国家として、行動する時期にきていると考えている。周辺国との外交努力を積み重ね、戦争の火種をなくしていくとともに、専守防衛で自力で国土を守ることが、本当にいまの日本にはできないのか。
TPP参加で日本の農業を破壊し、原発依存を続けることで国民を原発事故のリスクにさらし続け、沖縄県の反対を踏みにじって辺野古に米軍の巨大基地を建設し、自衛隊員の命を米国の戦争の犠牲にする。米軍の傘は、そんな巨大な犠牲を支払ってでも手に入れないといけないほど重要だとは、私には思えない。