しかし、食べ物の質、量、内容などによって腸内細菌のバランスが崩れ、それが免疫力にも影響して病気を引き起こしてしまう。「下痢」、「潰瘍性大腸炎」、「食物アレルギー」「大腸がん」などの症状だ。
「腸には第二の脳がある」と発表したのは、アメリカの神経整理学者のマイケル・D・ガーション博士だ。博士は脳の神経伝達物質「セロトニン」のほとんどが腸で作られていることが判明したことから、「腸は脳や脊髄から独立して機能している。それは消化・吸収・免疫調節・排泄など、多彩で複雑な仕事を自分の脳で考えて動いている」という説明をしている。
「人が受精卵から大きくなっていくとき、まず受精卵の真ん中を貫通する穴が開きますが、その穴は消化器官の原型。結局、人間の体は、元をたどれば消化器官に手や足や頭が生えたものです。ところが今の日本人は、この腸の不調に繋がる悪い環境にどっぷり浸かり過ぎている。日本人の腸は、もともと“低脂肪・高繊維”の食事に適応してきたのに、近年は加工食品やインスタント食品など栄養バランスの悪い食事を多く摂取するようになり“高脂肪・低繊維”へと変化してきました。こうなると腸内細菌のバランスが崩れてしまい、免疫性の働きまでもが大きく狂ってしまうのです」
こう語るのは、医学博士で循環器系クリニックの内浦尚之院長だ。
院長はさらに言う。
「とくに老化、ストレス、睡眠不足、過労、それに抗生物質の服用などで、腸にダメージが溜まります。そうなると善玉菌が減り、悪玉菌が増えるといった悪循環に陥る。中でもストレスは腸の免疫を乱す大敵で、腸内細菌のバランスが崩れやすくなります。腸の免疫が乱れるということは、免疫細胞が有害物質やウイルスを感知できなくなり、外敵が有害なのか無害なのかの判断にエラーが発生し、無害なものまで攻撃するという異常事態に陥り免疫力は弱っていく。つまり、悪玉菌が下痢や潰瘍大腸炎、大腸がんなどの病魔に侵されやすくなるのです」
また、「老化の引き金は腸である」とも定義されている。言い換えると、腸から発症するさまざまな病気や体の不具合は、腸の衰えが要因といわれる。顕著な例が、シミやしわ、肌荒れなど。女性はもちろんのこと、男性も、見た目にも若々しさを保ちたいと願うなら肌の健康に留意したい。よく疲労やストレス、寝不足がよくないといわれるが、それより腸の老化を防ぐことが一番の近道といわれる。
また「腸の状態が悪いと神経や脳にも影響する」と言うのは、東邦大学医療センター腎臓内分泌内科の担当医で、こう続ける。
「腸が不調に陥ると当然、ストレスも溜まるし、お腹の具合も悪くなる。仕事もやる気を無くし、イライラも増すようになります。こうした状態が続くと、神経症の病気が気掛かりです。躁鬱病をはじめ、認知症やアルツハイマー病、あるいはパーキンソン病なども腸の老化に起因しているといわれますので深刻です」
ちなみに、パーキンソン病の初期症状に多いのが便秘で、認知症も腸との関連付けが指摘される。また糖尿病の人は認知症を患いやすいということも多くの研究者の間で議論が重ねられてきた。原因は、糖尿病は血管の病気のため脳への血の巡りが悪くなるから発症するといわれ、最近の研究でも、腸の働きが極端に低下すると脳にうまく指令を出せなくなるのが要因という事がわかり、注目を集めている。