常連、初出場の各校が頭を悩ませていたのが『応援団の遠征費』で、出場校は移動バス、食事、グッズなどの費用を用意しなければならない。
応援団員、ブラスバンド部、チアガール、ベンチ入りから漏れた野球部員、引率職員はもちろんだが、これにOBや父母会が加わると、約1000人が応援のために移動する計算になる。
関東圏の高校によれば、移動バスはチャーターで20台を確保し、「往復ともに車中泊としても、高速代を含めて1台当たり約30万円」とのこと。仮に2回戦まで進んだとして、「30万円×20台×2試合=1200万円」の計算だ。さらに食事代、帽子、メガホン、横断幕、「アルプススタンド席の入場料300円×1000人×2試合=60万円」が加わり、さらに春なら防寒用のウインドブレーカー、夏の大会ならお揃いのTシャツを人数分制作しなければならない。
また、寄付をしてくれた地元関係者、OB、父母へのお礼としてキーホルダー、タオルなどの記念グッズも学校が制作しなければならず、これらの経費が800万円強。2回戦まで戦うとして、合計2000万円が消える計算だが、出場校の出費はこれだけではない。
野球部員が使う練習用具のほか、打撃マシン、ブラスバンド部が手荷物として運べない大型の楽器などの運搬費も計算しなければならない。また、雨天順延となったときも想定し、予備宿泊費も計算に入れておく。
しかも、大半の高校は甲子園本番に備え、ユニフォームを新調する。バッグ、グラウンドジャンバー、汗だしのウインドブレーカーなども同時注文するため、野球部員「1人当たり約10万円」の出費となる。
平成11年のデータだが、同年センバツ大会に出場した千葉県柏陵高校は「2回戦進出を想定し、総予算7800万円」の予算を組んだ。また、前年夏の甲子園に初出場を果たし、センバツ大会3回戦まで進んだ埼玉県滑川高校は9200万円以上の出費だった。
「関東圏の高校が決勝戦まで進めば、1億円強の出費は当たり前」(学校職員)
こうした“多額の甲子園費用”は学校予算だけでは当然賄えず、学校OB、地元企業、父母会の寄付のほか、学校職員が地元自治体に頭を下げ、補助予算を組んでもらって対応する。
平成11年、千葉県柏市は200万円を、水戸商の茨城県水戸市は500万円を出したとも言われている。
地元企業、商店街は一連の不況で「財布のヒモが固い」という。宗教法人系の学校、伝統校は「寄付金が集まりやすい」とされるが、出場校の大半は寄付金を自治体や地元関係者に頼っている。この寄付金集めの際、高校は“地元”を強く意識させられる。野球留学生の多い高校は寄付を頼みにくいだろうが、高校野球は愛されているから、応援してもらえるのである。
100回目の夏、球児たちはどんな戦いを繰り広げてくれるだろうか。