A:噛み合わせの異常が関係しているのでしょう。虫歯を治療しなかったり、歯周病などで抜けた歯を放置しておくと、歯列(歯並び)が狂ってきて、噛み合わせがおかしくなってきます。
噛み合わせの異常は、歯科の治療が適切に行われなかったことでも起こります。噛み合わせが一部分だけ狂っただけで、全体がおかしくなるのです。
歯科の治療が原因で不正咬合が起こることは非常に問題ですが、残念ながら珍しいことではありません。
●噛み合わせの異常に起因
しかし、噛み合わせの一部分に狂いが生じても、一般の患者さんが気付くことは稀です。また、義歯を入れた場合、そのときは歯列や噛み合わせを正常にしても、義歯の噛み合う面が摩耗し、噛み合わせが微妙に狂ってくることがあります。
おそらく治療を行った時点では、噛み合わせはうまく調整できていたはずです。時間がたって、微妙なズレが生じたのでしょう。
ご質問の方の場合、イライラや不安がひどくなったそうですが、これも前述したように噛み合わせの異常に起因していると思われます。
●体が受けるストレス
まず、歯科医院を受診し、噛み合わせをチェックしてもらってください。咬合が正常になれば、精神的な症状も快方に向かいます。
私たちは一般にストレスというと、仕事や人間関係で受ける精神的ストレスと思いがちですが、体が受けるストレスもあるのです。
噛み合わせの異常も、体に大きなストレスをもたらします。そして、それが精神的ストレスに転化されるのでイライラしたりします。
ご質問の方は、リストラへの不安が背景にあった上に、噛み合わせの異常が体のストレスとなり、さらに精神状態が悪くなったのでしょう。
こういうケースは、更年期の女性に多く見られます。また、老化による骨密度の低下でも、噛み合わせの異常は生じます。
私の医院では歯科の治療だけでなく、それと並行して、精神的な症状に対しては漢方薬を処方しています。
ご質問の方も、そういう面のケアも含めた治療をしてもらえる歯科医院にかかるとよいでしょう。
渡辺秀司氏(とつかグリーン歯科医院院長、漢方歯科医学研究所所長)
独自の歯周病治療で名高い神奈川歯科大学卒。同大学研修医を経て、とつかグリーン歯科医院を開設。歯学博士。天然素材を配合したうがい薬や歯磨き剤を開発。漢方歯科医学研究所所長。