「稲葉ジャパンの最大の課題は、東京五輪で金メダルを獲得すること。東京五輪はプロ、アマチュアの混合チームになる可能性が高く、清宮が進学を選択したとすれば、『アマチュア代表』としてチーム入りするでしょう。U―18のメンバーは東京五輪年に21歳、他にも好選手が多いので、自分の目で確かめておきたいと思ったのでは」(ベテラン記者)
監督が直接視察し、選手を見極めるのは当然のこと。しかし、新生・侍ジャパンは『強化本部』を機能させ、選手選出などのチーム構成を行っていく予定だったはず。視察などの予定は稲葉監督からではなく、侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズから“発信”されるべきだが…。
「強化本部の必要性は2015年のプレミア12の敗退後から伝えられていました。監督に選手選出の全てを託すのではなく、裏方がサポートしていくべきだ、と。今春のWBCで優勝したアメリカ代表には『交渉役』がいて、代表入りに難グセをつける選手に対し、所属球団やその代理人と話し合い、起用法などの条件こそつきましたが、その引き換えに代表入りさせています。東京五輪はペナントレースのシーズン中なので日本人メジャーリーガー招集は無理だとしても、次回WBCではそういった効果が見られるのではないかと期待されています」(前出・同)
その強化本部の当面の仕事は、稲葉監督を支えるコーチスタッフを決めること。漏れ伝わってくる限りでは、稲葉監督の日本ハム時代の同僚にあたる金子誠、建山義紀両氏がコーチ候補に挙がっているそうだ。しかし、両氏とも指導者経験はゼロだ。もし本当なら、監督以下首脳陣が未経験者となる。
こうした現状と同時に聞こえてきたのが、今年11月開催の『アジア プロ野球チャンピオンシップ2017』における選手招集の基準を少し変更するとの情報だ。
「将来のため、若手中心の選手招集になることは間違いありません。でも、若手だけのチームにしないで、ベテランも招集すべきとの声も出ています」(球界関係者)
今春の侍ジャパンメンバーのまとめ役は、今年35歳の内川聖一だった。内川一人にまとめ役を任せてしまったが、選手と首脳陣の間を繋ぐベテランを“増員”すべきだというのだ。
「とくにオリンピックの戦い方が難しいんですよ。ベンチ入りできるコーチは、ヘッド格のコーチを含め3人だけ。そうなると、ブルペン担当のコーチを置けなくなり、救援投手を準備させるタイミングも難しくなります。三塁コーチャーもコーチにやってもらうわけですし…」(前出・同)
考えてみれば、稲葉監督も“繋ぎ役”を務めた経験がある。2013年のWBC大会では「40代の代表選手」となったが、選手からは「首脳陣に進言できるアニキ役」、首脳陣の側からも助言を求められる場面もあった。ベテランの必要性は体験済みだ。
急浮上してきたのが、巨人・阿部慎之助、阪神・鳥谷敬、福留孝介、広島・新井貴浩、ソフトバンク・和田毅など…。ここ一番での代打登場としてはもちろんだが、試合前の準備、体調管理などで若手選手を触発してくれるだろう。また、彼らなら、一塁コーチャーやブルペン担当を兼任してもらうことも可能だ。代表チームの選手、コーチを歴任した稲葉監督を「内部昇格」と見れば、次の指揮官を彼らから選ぶことも出来る。
ベテラン再招集案が進められるのであれば、それこそ強化本部が所属球団に“根回し”をしなければならない。ベテランの力を借りるのは悪い話ではない。しかし、いまだ正式にコーチ人事を発表できない強化本部に「再招集案」の根拠があるのだから、稲葉監督も苦労させられそうだ。