今から21年前の1987年、武豊騎手(栗東・フリー)が達成した新人騎手最多勝記録69勝は、この先50年は破られないといわれた大記録だった。ところが、三浦皇成騎手は春競馬で24勝を挙げると、今夏の北海道シリーズ(函館、札幌)では4カ月間で41勝をマークする加速度的なペースで勝ち星を積み上げてきた。
「ここまでこられたのは調教師の先生や厩舎スタッフなど、サポートしてくれる皆さんのおかげです」と謙虚に語る三浦騎手だが、快挙達成はもはや時間の問題。「春は記録なんて意識していませんでしたが、今はチャンスを与えてもらっている。それに応えるためにも武豊さんを目標に頑張りたい気持ちです」と意欲を燃やしている。
ところで、ここまで勝ち続けてこられたのは「本人のセンス、努力も確かだが、河野(調教師)さんが付きっきりで面倒見ていることが大きい」と指摘するのは、現役時代に“剛腕”の異名を取り、一時代を築いた郷原師(通算1515勝は歴代10位)だ。
調教師には馬を育てることと、もうひとつ、弟子(騎手)を育てる大きな仕事がある。河野師は三浦がデビューする前、忙しい教育実習の合間を縫って、わざわざサンタアニタ競馬場まで連れて行き、世界の一流騎手の騎乗技術を目に焼き付けさせたこともあった。その騎手を育てる熱意には、郷原師はじめ、周囲の厩舎人の誰もが脱帽する。
河野師の“教育方針”の根幹は3つ。まず、日常の礼儀作法。
「馬に乗る前に、担当者の名前を付けて、感謝の気持ちを込めてあいさつする」
技術的には「楽な姿勢で乗るな。直線で最低3回はムチの持ちかえをやれ」
そして、レースに行っての心構えだ。
「コーナーワークでの事故防止のために、内から1頭半分をあける。直線では内をあけるな」
師匠の教えを忠実に実践している三浦はやはり、只者ではない。
今週の毎日王冠ではドリームパスポートに騎乗、2度目の重賞制覇を目指す。
○ドリパス 直線で矢のような伸び
三浦騎手は今朝(8日)、「第59回毎日王冠」(GII、東京芝1800メートル、12日)で初コンビを組むドリームパスポートの追い切りに騎乗し、感触を確かめた。
角馬場で体をほぐした後、ポリトラックへ。折り合いが課題となっているドリパスだが、三浦との呼吸はピタリ。リズミカルな走りで直線を迎えると、終いも楽な手応えのままシャープに脚を伸ばした。
「予定より時計は速くなりましたが、思ったほど掛からないですね。フットワークもいいし、終いの反応も良かった。休み明けという感じはしません。本番でもいいイメージを持って乗れそうです」と引き揚げてきた三浦は手応えのほどを伝えた。
一昨年の3冠クラシックで(2)(3)(2)着した実績馬。関東に転厩後はひところの勢いはないが、眠っている闘争本能が、スーパールーキーの手綱によって目覚めれば、あっさり勝っても不思議はない。